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2006年07月21日

はじめに

数あるサイトの中から、ようこそ「始めよう!株式投資」
にお越し下さいました。
管理人のありさと申します。
お金には縁のない生活を送っています。。。

でも、いつまでもこのままではいけません!
お金に縁がないなら自分から近づいて行こう!と一念発起。
このサイトを立ち上げるに至りました。

はやってみたいけれど怖いと思っているそこのアナタ、
動かなければ何も始まりません!
株式投資の世界に、足を踏み出してみましょう!

まずはありさと一緒にお勉強から始めましょう。

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Photo by Free Photos

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そもそも株って…

ここで今一度おさらいをしてみましょう。

企業が事業を行うためには、土地や建物・様々な設備投資・
原材料や人材の調達など、たくさんのお金がかかります。
1つの企業でそれら全てを用意するのは
とても容易ではありません。

そこで株式と呼ばれる出資証券(株券)を発行して
資金を調達するのです。(自己資本)

その資金を元に作られた会社を株式会社と言い、
会社の資金の単位が一株を一単位とするので、
株式とは会社を切り分けたもの、とも言えます。

市場で株式を購入すれば誰でも株主になる事ができ、
つまり株主とは、会社の一部を所有している
オーナーなのです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

でも私たちが普通「株をやる」という時に
株式を購入するのは、多くはその株が値上がりして
高くなった時に売って儲けることを目論んでいるわけです。
(キャピタルゲイン)

この意味では、株式を買って会社に投資すると言うよりも
投機的な意味合いの方が強いと言えます。
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株式会社の起源は一般に、
1602年に設立されたオランダ東インド会社とされています。

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Photo by esupply

当時の航海は大変な危険を伴うもので、
アジアから無事に戻ってくれば莫大な利益を得る反面、
生きて帰れないケースも多かったのです。

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Photo by esupply

そんな時に考え出されたのが、
お金のある人から資金を集め、
航海が成功すれば出資金に応じて利益を分配し、
失敗したら出資金は諦めるという仕組みです。

今の株式会社に当てはめてみても
分かりやすいですね。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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2006年07月20日

株式の公開と株の持ち合い

株式の公開とは、
文字通り、広く一般の人が会社の株式を
売ったり買ったりできるようにする事です。

会社も大きくなってくると、身内や特定の株主からの
資金だけでは間に合わなくなってきます。(未公開会社)

その時、社債発行や銀行からの借り入れ
という方法もありますが、
長期安定的な資金(株式)として調達する方が有利といえます。
そこで、会社の事業内容など必要な情報を提供し、
広く株式を買ってもらう(投資してもらう=自己資本方法が
株式公開なのです。

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ところが日本では戦後、財閥の解体で
株式が一般に売り出された時に
株の持ち合いが始まりました。
乗っ取りを恐れたのですね。

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Photo by M's Gallery

1960年代後半からは、外国資本による
企業支配の懸念が高まり、
企業と関係金融機関がグループを形成し、
互いに株を持ち合い経営の安定化をはかりました。

その安定的な経営環境は、経営者に
”株主のために利益を上げる”
という本来の使命を忘れさせ、収益性は低くても
事業拡大最優先という暴走を招いてしまいました。

本業とは全く関係のない事業に進出することも、
決して珍しいことではありませんでした。

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Photo by LinkStyle

しかしバブルがはじけてからは、
このもたれ合いの構図は急速に変わりつつあります。

企業の倒産による打撃を、銀行一手で引き受けるのは辛くなり、
広く一般の人に市場に参加してもらい、
見込みのある事業に投資してもらおう、
という動きに変わってきているのです。

間接金融から直接金融へ大きく動いている途中でした。

ところが、LDや村上ファンドなど、
最近の一連の動きを受けて、M&A(企業の合併・買収)
に対抗するために、株式の持ち合い・復活、の声も
ちらほらと出てきました。

まぁそうは言っても、持ち合いを再開させているのは
業績がいい一部の業種だけみたいですが…
この動き、注視して行く必要がありそうです。

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Photo by LinkStyle

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社債と株式の違い

企業の、株式以外での資金調達方法に社債発行があります。
社債は、一定期間後に利子を付けて返済しなければならない
借用証券(他人資本)
であるのに対し、
株式は返済の義務のない出資証券(自己資本)
という違いがあります。

ただ社債も株式も銀行からの借入れである間接金融とは違い、
投資家から直接資金を調達する直接金融という点では同じです。

会社が倒産した場合、株式の場合は
株主が出資金を諦めるしかありませんが、
社債の場合は投資家に返済しなければなりません。

 この時株主は、会社の債権者に対して
 出資額以上の支払い義務はありません。
 これを株主の有限責任制度といいます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

社債は、株式発行に比べて短期間で発行できることや、
株式価値を損ねずに資金調達できるというメリットがあります。

社債発行会社は、社債の条件(金利、償還金額、償還日等)を決定し
引き受け手を探すのですが、その場合
株式を公開している会社は、
広く一般から募集するので公募と呼ばれますが、
未公開会社の発行するものは私募債と呼ばれます。

◇社債には、普通社債と新株予約権付社債の2種類があります。
従来の転換社債とワラント付社債は2002年の商法改正で、
新株予約権付社債に分類
されました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

転換社債とは株式に転換する権利が付いた社債のことですが、
株式に転換するのに追加の資金を必要としないので
投資家に大変有利な社債です。

株価が値下がりした時には、そのまま持っていれば
クーポンの支払いを受けることができ、
満期日には元本全額戻ってきます。

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また発行会社にも、普通の社債より有利な条件で
発行できるというメリットがあります。
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ワラント付社債とは、新株予約権の付いた社債のことです。
転換社債との違いは、株式を取得するのに
新たに購入資金が必要となります。

転換社債と違って新株予約権を行使しても、
社債としての権利は残ります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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次のページ  :転換社債(CB)とは>

転換社債(CB)とは

転換社債とは株式に転換する権利の付いた社債で、
平成14年(2002年)の商法改正で正式名称が
転換社債型新株予約権付社債になりました。

Convertible bond (転換できる債権)の頭文字をとって
CB(シービー)と略されます。

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発行時に決められた転換価格で、一定の期間内
(転換請求期間)に債券保有者が発行会社に対して
株式に転換請求をする事ができます。

株が値上がりした場合は株式に転換し、値下がりした場合は
社債のまま保持し利息を受け取ることができます。
つまり転換社債(CB)は、
 ・利回り確定の社債としての安全性
 ・値上がりが期待される株式としての魅力
 (キャピタルゲイン=売却益)
両方の利点を兼ね備えた社債といえます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

転換社債は転換権を行使すると社債がなくなり株式に変わり、
いったん株式へ転換すると再び社債には戻せません。

購入した転換社債をそのまま保有するのか、株式に転換後
売却して利益を確保するのかを判断する材料として、
バリティ、理論価格と呼ばれるものがあります。

  ※バリティとは、転換価格を100とした時の
  株式の時価がいくらになるかを計算したもの
で、
  現在の株価(時価)を転換価格で割って出します。

バリティ(理論価格)=株価(時価)÷転換価格×100

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Photo by(C)SozaiRoom.com

時価が転換価格と同じ場合、
バリティは100円で額面価格と一致します。
転換社債を発行する時は、株式の時価よりも高く設定されるので、
株が値上がりして転換価格を上回ればバリティは100円を超え、
株価が下がれば理論価格も下がります。

よってバリティ価格が100円↑であれば株式に転換し
売却して利益を確保し、
100円↓の場合は
転換社債のまま保有した方がいいことになります。

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Photo by M's Gallery

購入した転換社債を処分する方法としては、
株式に転換して売却する方法の他に、
転換社債としてそのまま売却する方法もあります。

どちらが得かを比較するのにかい離率というのがあります。

 ※かい離率とは転換社債の時価と、
 バリティの離れ具合の割合を示したもの
です。

 かい離率=(転換社債時価ー理論価格)÷バリティ×100

かい離率がマイナスになっている時逆かい離率といい、
転換社債が株式より割安になっている状態を示します。

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転換社債の利回りというのは、投資金額に対して受取収入の
割合を1年あたりで計算したもので、
短期間CB(転換社債)を保有する場合の利回りの尺度

直接利回り=年利息÷CB購入価格×100 があり、

CBを償還日まで保有する場合の1年あたりの償還差益を
年利息に加味した割合を最終利回りといいます。

最終利回り=[年利息+(額面ーCB購入価格)÷
       満期日までの年数]÷CB購入価格

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Photo by (c)Tomo.Yun

転換社債(CB)は、企業側からみても、社債のクーポン利率を
低くして発行できるため、借り入れ時の負担減になります。

業績が好調で株価が上がれば、株式へ転換されるので
社債を返済する義務がなくなる
など、
双方にとって魅力的な直接金融といえます。


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Photo by ★Freepict(フリーピクト)

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次のページ  :ワラント債(新株予約権付社債)とは>

ワラント債(新株予約権付社債)とは

ワラント債とは、発行会社の株式を
購入する権利の付いた社債
のことで、
この権利の事をワラント(新株引受権)と言います。

ワラントを持っていると、その有効期間(行使期間)内の
好きな時に、予め決められた値段で

その会社の株式を買うことができます。

転換社債の「転換価格」にあたるもので、
これを行使価格と言います。

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Photo by LinkStyle

ワラント債は、株式を取得する際に新たに資金が必要ですが、
株式購入後も社債が手元に残るのが、
転換社債との大きな違いです。

ワラントの権利を実行することを行使するといい、
権利を実行しないことを放棄するといいます。

行使期間を過ぎるとワラントの権利は無価値になり、
国内で発行されるワラントの行使期間は
商法では10年以内としています。

社債額面に対して与えられるワラントの割合のことを
付与率
といい、付与率は最大1と定められています。

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Photo by かもめ工房

ワラント債の社債とワラント(新株引受権)を
別々に販売できるものを分離型ワラント債といい、

1985年から発行が認められたのを機に、
外貨建ワラントと同様に現在流通しているタイプは、
ほとんどが分離型ワラント債です。

切り離された社債部分を、エクスワラント(Ex-warrant)とか
麻雀用語に例えてポンカス債と呼んでいます。
エクスワラントは普通社債と同様に定期的に利息がもらえます。

一方ワラント部分のことは、新株予約権証書と言います。
新株予約権証書が分離する前のワラント債、つまり
広く出回っている分離型ワラント債のことを、
カムワラントと言います。

  エクスワラントはそのまま債券市場で売買もできますし、
  表面金利は普通社債より低いのですが、
  ワラントが無い分価値が下がるので、
  最終的な利回りは高くなります

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Photo by (C)PictureBox

ワラントの魅力は何といっても小額の資金で、
株式を購入しているかのような利益が出ることでしょう。

この少ない資金でたくさんの利益が出る様を、大きさの違う
歯車にたとえ、株価とワラント価格の間の変動率を
てこの力に見立て(レバレッジ)
これをギアリング効果と呼んでいます。

ワラント投資の効率性を示す指標がギアリング・レシオです。
株価が1株あたりのワラント金額の
何倍にあたるかを示すもので、
数値が大きいほど、効率がいいということになります。

これは企業にとっても、ワラント(新株引受権)という
付加価値
が付いているため普通社債に比べて低金利で
資金が調達
でき、ワラントが行使されると(株式購入)
社債とは別に資金を得ることができます。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

ワラントの価値は、株価が行使価格より
どれだけ値上がりしているかで決まります。

株価と行使価格の差額バリティ(理論価格)と呼び、
現時点でのワラント(新株引受権)の価値を示します。

 バリティ(%)=(株価ー行使価格)÷行使価格×100

転換社債のバリティとの違いは、債券本体部分の
価格(100%)を含めて表示するかどうかです。
転換社債のバリティは150%となります。

バリティは市場のワラント価格の基準です。
株価が値上がりすると予測する人は、
バリティより高値でもワラントを購入
しようとします。

このバリティより高値の部分、上乗せした部分を
プレミアム(かい離率)といいます。
つまりワラント価格は、バリティにプレミアムを足した値段、
ということになります。

 ワラントコスト=バリティ金額+プレミアム金額

  ※ワラントもオプションの一種ですが、
  オプションではバリティとプレミアムの
  合計額をプレミアム
と呼んでいて、
  少し違うので注意が必要です。

※オプションとは特定の日に特定の売買を行う権利のことです。
買う権利をコールオプション、売る権利をプットオプションといいます。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

ワラント価格が、バリティからどれだけ離れているかを見るのに
利用されているのが、かい離率(プレミアム)です。
ワラントがどれ位割高に買われているかを見る指標です。

 普通プレミアムは金額ではなく、
 株価からの離れ具合を%で表します。

プレミアム%=[(ワラントコスト+行使価格)÷株価ー1]×100

 ワラントはギアリング効果の高い
 ハイリスク・ハイリターン商品
です。

 海外の方が発行費用が安いため
 主に海外市場で発行されていて、

 これを外貨建ワラントと呼んでいます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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2006年07月19日

株式公開のメリット

株式を公開するということは、
まず企業にとって社会的信用が違ってきます。

現在日本には120万に及ぶ事業法人がありますが、
このうち株式を公開しているのは
およそ3500社にすぎません。
厳格な公開審査をクリアした”エリート”として
広く社会に認められ、
様々なことがスムーズに運ぶようになります。

また新聞に株価が載ることは絶大なPRになります。

未公開時代には難しかった公募による株式時価発行増資、
新株予約権付社債の発行等の直接金融が可能になり、
信用力の向上は、金融機関からの資金調達も
より有利な条件の元で
行うことが出来ます。

このような様々な方法での資金調達は、
財務体質の強化が飛躍的に向上します。

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Photo by (c)Tomo.Yun

株式の公開は人材の採用・育成にも大変有利です。
従業員持株制度ストックオプション制度第三者割当増資
といったインセンティブプランを取り入れることによって、
社員の士気向上を促し、ひいては会社の業績向上にも繋がります。

公開審査をクリアするために、社内体制全般を
見直すことになり、改善・改革を推し進める結果
経営の透明性が増し、内部管理体制が充実します。

ベンチャー企業の株式を取得した際の税制上の優遇措置、
エンジェル税制という物もあります。

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一方株主としてのメリットには、
株式の流動性の増大が挙げられます。
いつでも換金することができるので、
事業の継承や相続税対策にはなくてはならない手段です。

創業者であるオーナー経営者は、
株式売却により創業者利潤を得ることができます。

一般の投資家にとっても、株式売買が容易になり
資産形成の幅が広がることになります。

株式市場で公正な価格が形成・公表されるため、
株式の売買・相続・贈与などの際、合理的説明が得られ易く
評価が容易になります。

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Photo by 2000ピクセル以上のフリー写真素材集

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次のページ  :株式公開のデメリット>

株式公開のデメリット

株式を公開した企業は様々なメリットを享受する反面、
社会的責任を負うことになります。

その際最も重要視されなければならないのは
コンプライアンス(法令遵守)の徹底でしょう。

不祥事やスキャンダルを起こさないように、
経営者は自らの発言や行動に注意し、
社員にも、公開を果たした企業として恥ずかしくない
言動を日頃から取るよう、教育が必要です。

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Photo by かもめ工房

◇経営支配権の確保
M&Aや投機的取引、敵対的買収のターゲットになる
可能性があります。
株買占めにより経営権を失う恐れもあるので
安定株主対策が必要になります。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

◇株主総会対策も必要です。

情報開示(ディスクロージャー)の義務が生じます。
投資家保護の観点から、投資判断資料を提供するために
損益計算書を含む有価証券報告書や決算発表の提出が
義務付けられています。

また経営の公正さや透明性を確保し、情報開示や
説明責任(アカウンタビリティ)を果たし、より良い企業にしていく
コーポレートガバナンスの仕組みを取り入れることも
求められています。

◇それらを遂行するための事務上の負担は
飛躍的に増大します。
会計検査等のコスト増も規模の小さい企業にとっては
大きな負担です。

◇株主代表訴訟により
経営者責任を追及される恐れがあります。

◇株価の維持・配当の維持などの圧力がかかります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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次のページ  :売買できる株式・株式市場>

売買できる株式・株式市場

日本における全ての株式会社が株を発行していますが、
その中で私たちが実際に売買できるのは、
原則として株式市場に上場・公開しているものだけ
です。

株式の公開には、証券取引所市場への上場と
JASDAQ市場への登録
があります。

東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・ジャスダックの6ヶ所の証券取引所
東証マザーズ大証ヘラクレス、ジャスダック(JASDAQ)の
新興3市場がこれにあたります。
(※JASDAQは2004年12月に、店頭市場から
証券取引所になりました。)

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Photo by(C)SozaiRoom.com

東京・大阪・名古屋には1部と2部があり、
東証1部と東証2部で、取引全体の9割を占めています。

上場というのは、簡単に言うと会社の株を一般の人が
売買できるように株式市場に登録することです。

東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、ジャスダックの
6ヶ所の証券取引所で、
株式の売買が認められている企業を
「上場企業」と言います。

上場には厳しい審査基準が定められており、
100万社以上ある日本の株式会社のうち,
東証1部上場の約1600社、東証2部上場の約550社は、
エリート中のエリートといえますね。

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Photo by (c)Tomo.Yun

企業にとっては知名度が上がり、社会的な信用をもとに
資金調達力が大幅にアップしさらに事業の拡大ができます。
また優秀な人材の確保にも優位に働きます。

一方、上場基準が緩やかな新興3市場では、
企業の収益性よりも将来性や成長性が重視されます。
東証マザーズでは、赤字決算でも上場できます。

ハイリスク・ハイリターンの新興市場については、
もう少し詳しく見て行きましょう。

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Photo by ★Freepict(フリーピクト)

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次のページ  :昭和38年、店頭市場発足>

2006年07月18日

昭和38年、店頭市場発足

現在の店頭登録制度は1963年、
日本証券業協会において制定されました。

元々上場するのが難しい中小企業がまずは店頭登録をして
会社が大きくなってきたら上場を目指すという位置づけでした。

上場するのに比べ、登録するための基準が緩やかなので、
資金の調達がしやすかったのです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

昭和58年(1983年)の規制緩和
さらに登録基準が緩められ、
公募増資規制の緩和など改善策が図られた結果、
店頭市場は俄かに活況を呈してきました。

しかし昭和63年(1988年)、
政・官・財癒着を白日の下に曝した
戦後最大級の構造汚職事件「リクルート事件」が発生。

未公開株・錬金術の概要が明らかになるにつれ、
「値上がり確実な未公開株、私も欲しいなぁ…」
という世の中の不公平感を一掃する目的で、
証券取引審議会は昭和63年12月に、
「株式公開制度のあり方について」という答申を行います。

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これを受けて日本証券業協会は、平成元年2月に
「株式店頭市場の改善要綱」を策定しました。

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 この時に設けられた「登録前の株式移動および
 第三者割当増資等に対する規制」
というのは、
 要するに公開前の株主政策をガラス張りにするものですが、
 最近では、中堅・中小企業の資金調達ニーズを
 著しく妨げるものとして、廃止が提言されています。

このようにして店頭市場は、発行・流通の両面においても、
取引所市場と何ら遜色のない市場に発展してきました。

1991年(平成3年)には、米国ナスダック(NASDAQ)
にちなんで、ジャスダック(JASDAQ)システムが稼動しました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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現在のページ:昭和38年、店頭市場発足

次のページ  :店頭市場からジャスダック証券取引所へ>

2006年07月17日

店頭市場からジャスダック証券取引所へ

上場ができる企業でも、あえて店頭登録を選択する
企業も増えてきました。
取引所市場の補助的存在というよりは、
株式公開の選択肢として「独自の市場」
として位置づけられるようになってきたのです。

ところがそこに平成不況がやってきます。。。

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Photo by かもめ工房


売買高が少なく流通性に乏しい店頭株
個人投資家から敬遠され、
時価総額が小さくファンドに組み込みにくいために
機関投資家も取引が難しく…
店頭市場にとってはつらい時期が続きました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

一方では、日本版金融ビッグバンによる
証券取引法の改正に伴い平成10年12月には、
「店頭売買有価証券市場」と定義されます。
取引所市場と並列する競争的市場となったのです。

その間にも、「売りたい時に売れない」という
最大の課題である流動性を向上するための
マーケットメーカー制度の導入、
公開前の価格決定にブックビルディング方式を導入、
店頭管理銘柄の整理促進(J-Stock銘柄の選定)、
IRの促進、など改革が進められ、

2004年(平成16年)12月には、
証券取引所免許を取得し、
「株式会社ジャスダック証券取引所」となったのです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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現在のページ:店頭市場からジャスダック証券取引所へ

次のページ  :マーケットメーク制度の理想と現実>

マーケットメーク制度の理想と現実

発展と改革を遂げてきた店頭市場(ジャスダック市場)ですが、
売買高が少なく、売りたい時に売れないというのは
大きなマイナス要因でした。
(流動性リスク)

マーケットメーク制度では、根付け業者とも言われる
証券会社マーケットメーカーが、必ず
売買の相手方として存在するので、
流動性リスクのない売買手法が実現しました。
ジャスダック市場特有の制度です。

その取引は相対で、成行注文はできず、
投資家はすべて指し値で注文を出します。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

また複数のマーケットメーカー間の競争を促すことで
適正な価格を維持するために、

最良気配を提示したマーケットメーカーのみが
売買できる仕組みが取られています。

ジャスダック証券取引所のマーケットメイク銘柄(MM銘柄)に
指定されるためには、
4社以上の証券会社が
届け出を行う必要があります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

当初、流動性の向上などを期待して導入された制度ですが、
実際に始まってみると、理想とは掛け離れた制度では…
という声も日増しに強くなっています。

相対取引であるため、投資家が望む値段が
提示されていても、取引が成立するとは限りません。
投資家同士の注文がぶつかるわけではないからです。

また現在のマーケットメーク制度では、
投資家の指値がマーケットメーカーの気配より良くても
その気配を公表する義務がありません。

つまり投資家の指値以下でマーケットメーカーが買い、
投資家の指値で売ってスプレッド(売買の差額)を
利益として享受することもできる
のです。

日本がお手本にした米国ナスダック(NASDAQ)では、
オーダーハンドリングルールと呼ばれる規制が存在します。

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Photo by LinkStyle

客の注文の指値が自分の気配より良い場合は、
それを提示しなければならず(オーダーディスプレイルール)、

客の指値注文とマーケットメーカーの気配が同値段の場合は
客の注文を優先しなければなりません。(マニングルール)

他にも値幅制限が課せられていないので、
投資家が事前に価格の意思表示をしていないと、
とんでもない値段がつく可能性もあります。

またマーケットメーク銘柄については、
バイカイを見る」という概念がなくなったため、
マーケットメーカー以外の証券会社にとっては、
取引に非常に手間がかかるようになりました。

これは将来的には、コスト高となって
返ってくるでしょう。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

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2006年07月16日

その他の新興市場

1998 年(平成10年)は、金融ビッグバンとして
証券市場改革がスタートし、
マーケットメイク制度の導入や、
証券市場開設が自由化され、遅まきながら日本でも
本格的な改革が始まった年でした。

そこに目をつけた米国ナスダックは、翌1999年(平成11年)、
日本進出の構想を明らかにします。

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Photo by (C)PictureBox

当初は、NASDAQ を運営する全米証券業協会と
日本のソフトバンク社が、

新たな証券業協会を作って自主規制機関とし、
その下で新市場を開設しようとしていましたが、
インフラの整備に時間と費用がかかることから断念。

2000年(平成12年)、大阪証券取引所(大証)と提携し、
ナスダック・ジャパンを開設しましたが、
不振が続き
2002年10月には業務提携を解消。

ナスダック・ジャパンはその後「ヘラクレス」と名称を変え、
大阪証券取引所が12月から単独で運営しています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

そして、東京証券取引所の対応も迅速でした。
1999年(平成11年)11月には、
成長の可能性を秘めた新興企業の資金調達を可能にし、
それによって新しい投資家も発掘する事を目的として、
ベンチャー企業向けに新市場マザーズ」を創設しました。

名古屋証券取引所では「セントレックス」、
札幌証券取引所では「アンビシャス」、
福岡証券取引所では「Q−BOARD」(Qボード)が、
成長の期待がもてる新興企業向け市場として
開設・運営されています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

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2006年07月15日

グリーンシート市場とは

グリーンシート市場とは、
日本証券業協会が1997年(平成9年)に
未上場中小企業のために開設した証券市場のことです。

米国の店頭市場「ピンクシート」に倣ってつけられました。

従来、未公開の株式は、ベンチャーキャピタルなど一部の
機関投資家を除いては、一般投資家は投資できませんでした。

投資家が多大なリスクを負うことになるかも知れない
未公開株式への投資勧誘は、
日本証券業協会の自主ルール
によって禁止されていたのです。

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Photo by カメラコゾウ

しかし1996年(平成8年)以降、赤字の企業でも
東証マザーズや大証ヘラクレスなどの新興市場で
上場できるようになるにつれ、
さらに小型の企業にも
資金調達への道を!
という声が強くなり、1997年(平成9年)、
適切な情報開示(ディスクロージャー)が行われている
銘柄を「店頭取扱有価証券」と定義し、証券会社による
投資勧誘を解禁しました。

証券会社が投資勧誘を行うものを
「グリーンシート銘柄」といいます。

グリーンシート市場には、これまでの証券市場には
見られなかった3つの大きな特徴があります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

1つ目は発行市場中心の市場であることです。
従来の株式の売買である流通市場中心ではなく、
新規に株式を発行し、直接金融で資金を調達
してもらおうという狙いです。

2つ目は、若い企業を育てよう!という機運が
投資家にあることです。
現在の大企業も、始まりは一ベンチャー企業でした。
未来のホンダ・ソニーを株主となって応援する!
という土壌を育んで行くことが大切です。

3つ目は公認会計士など会計専門家の活躍の場が
広がる
ということです。
グリーンシート市場は規模が小さい企業が多く、
社内管理体制の整備も不十分なため、
質の高いディスクロージャーは専門家に任せ、
投資家が投資しやすい環境を作るのに一役買っています。

またグリーンシート市場は、登録廃止となった銘柄の
流通市場としての役割もあります。

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Photo by 2000ピクセル以上のフリー写真素材集

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2006年07月14日

株主の権利とは

株式を買って株主になると、様々な特典が受けられますが、
学問上、自益権(株主自身の利益を目的とする権利)
共益権(会社経営への参画を目的とする権利)
に分類されます。

自益権はその全てが一株でも持っていれば行使できる
単独株主権ですが、
共益権には一定数以上の株式を保有していなければ
行使できない少数株主権があります。

原則として、持ち株数に応じた権利を有し、
これを株主平等の原則といいます。

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Photo by フリー写真素材集


       ーー自益権ーー

◇売買益で儲ける(キャピタルゲイン)
会社の業績が上がり株価の上がったところで
株式を売却して利益を得ることをキャピタルゲインといいます。
株式投資の一番の魅力と言ってもいいですね。

◇配当金がもらえる(インカムゲイン)
投資先の会社の経営が順調で収益を上げれば、
配当金がもらえます。

◇株主優待制度が受けられます
決算期末に単位株を取得している株主は、
この制度が受けられます。
自社製品やサービスの無料プレゼント等があります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

◇増資による株式分割で無償で株式を手に入れることができます。
(無償増資)

※また有償増資としては、株主割当発行増資というのがあります。
既にその銘柄を所持している株主しか買うことができない、
言ってみれば既存株主への特典です。時価よりも安く手に入り、
会社は得た資金で更なる設備投資や研究・開発に力を注ぎ、
それによって業績が伸び株価も上昇、1960年代、日本経済が
成長を続けていた頃の主流増資でした。

◇新株発行差止請求権
株式分割の無償増資とは逆に、
発行株式数が増えると一株当たりの価値が下がるので
こういう権利もあります。
 
◇残余財産の分配
会社が倒産した時に残余財産の分配を受ける権利があります。

◇新株引受権
会社が発行する新株を、優先的に引き受ける権利のことです。
3つの方式がありますが、このうち第三者割当方式というのは、
主に縁故者に新株引受権を割り当てるものです。

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       ーー共益権ーー

◇経営参加権があります。
単元株を取得している株主は、株主総会で
会社の重要な意志決定事項に賛否を表明することができます。

過半数の株式を持っている株主は、
会社の経営権を握ることも可能です。

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Photo by フリー写真素材集

◇議決権がある
   原則として、1単元株につき1票の議決権があります。

 
◇提案権がある
   発行済株式数の1%以上を持っていれば、
   取締役・監査役の選任等、株主総会の議案を提案
できます。
この他にも
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◇ 名義書換請求権

◇ 転換株式の転換請求権

◇ 株式買取請求権

◇ 株主総会の招集請求権

◇ 株主決議の取り消しを訴える権利

◇ 取締役の違法行為の差止請求権

◇ 取締役等の解任請求権
Photo by (c)Tomo.Yun
   等様々な権利があります。

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Photo by かもめ工房

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次のページ  :株式投資、リスクとリターン>

2006年07月13日

株式投資、リスクとリターン

株式投資のリターン(収益)としては、
株主の権利の自益権と内容が重なります。

まず、購入時より売却時の株価の方が上回っていれば
キャピタルゲインを手にすることが出来ます。

キャピタルゲインとは、売却益のことです。
値上がり益ともいいます。

企業の業績(純利益)が良ければ、
インカムゲイン(配当益)が得られます。

商品のプレゼントや無料サービスなど、
様々な株主優待が受けられることもあります。

・無償増資による株式分割…分割によって得た資金を
設備投資、研究・開発に充て、会社が発展すると株価も上がり、
一時的に低くなった株価はすぐに元通りになります。

・経営参加権…会社の業績を上げ
企業価値(=株主株価)を高めるには、
投資した資金が有効に使われているか、
会社の経営にも常に関心を持つことが大切
です。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

一方リスク(危険性)としては、代表的なものに
次の3つがあります。

・価格変動リスク株は値上がりもすれば当然値下がりもします。
大きく値を下げれば、大量の含み損を抱えることになります。
購入時より低い株価で売った場合には
売却損(キャピタルロス)が発生してしまいます。

・流動性リスク売買高が非常に小さく、売りたい時に売れない、
或いは非常に不利な条件でしか換金できないリスク
のことです。

日経225株価指数に取り上げられているような大企業の株式は
いつでも換金でき、その分高い価格で取引されます。
この価格差を流動性プレミアムといいます。

・倒産リスク(デフォルトリスク)…会社が倒産すれば、
その株式は単なる紙切れになります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

リスクとリターンの関係は株式投資に限ったものではありません。
リターンがある所には必ずリスクが存在します。

たとえ株価が急に値上がりして、ハイリターンを手にしたとしても、
裏を返せば、それはハイリスクであるということを、
忘れてはいけません。

ローリスク・ハイリターンなどというものは
存在しないのです。

ところが…
この記事を書いたのは2006年2月の初旬ですが、
それから程なくして耳寄りな情報を聞いてしましました。

今なら、ローリスク・ハイリターンという夢のような投資方法を
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Photo by (c)Tomo.Yun

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次のページ  :コーポレートガバナンスとは・その背景>

2006年07月12日

コーポレートガバナンスとは・その背景

コーポレートガバナンスとは、
日本語で企業統治と訳されています。
企業価値(=株主価値)維持増大のための経営が成されているか、
モニタリング(監視)する仕組み
のことです。

1980年代米国では、経営の監督・執行の分離を柱とした
企業統治の議論が活発になり、そのあり方が模索されていました。

日本でもバブル崩壊以降、相次ぐ企業の不祥事を機に、
コーポレートガバナンスの考え方が取り上げられるように
なってきました。

それまでの日本は、会社内部の昇進者から取締役会が構成され、
監査役も会社のOBという場合がほとんどでした。

取締役は株主総会で選任されるのですが、
広く分散した一般株主は影響力が乏しく、
株の持ち合いによる安定株主はいわゆる物言わぬ株主で、
チェック機能が働いているとはとても言えず、
馴れ合いの温床となっていたのです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

執行者と監督者が同一という取締役会の構成や、
外部からの圧力を受け流してしまう安定株主の存在は、

収益性の低い非効率的な事業に投資するという、
インサイダーコントロールの危険性をはらんでいます。

そういったモラルの低下を抑制していたのが
メインバンクによる監視でした。

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Photo by LinkStyle

しかしこの日本的な統治構造も、80年代半ばから
少しずつ変化を見せることになります。

規制緩和が段階的に進むにつれ、
優良企業は社債による資金調達にシフトし始めました。

一方、業績が振るわず、倒産リスクを抱える企業は
銀行から借り入れるより他なく、企業の分化が進み、
メインバンクがその力を発揮できる企業の範囲が狭まった結果、
余剰資金の貸し出し先が、不動産、建設、ノンバンクに
過剰に向けられることになりました。

90年代に入り、バブルが崩壊し株価は低迷。
住専問題や銀行の不良債権問題も明るみになり、
97年末の金融危機以降、銀行株はますます価値を下げ、
企業にとっても、連結財務諸表制度の導入や、
時価会計導入は、保有銀行株の処分を
再考せざるを得なくなりました。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

企業・金融機関ともに
株の持ち合いを続ける理由がなくなり、
系列の解消も進み、メインバンク制度や株式の持ち合い、
終身雇用制度などを特徴とした日本企業のあり方は、
変貌を余儀なくされるようになってきたのです。

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Photo by LinkStyle

こうして安定株式も減少していく中、
シェアを伸ばしてきたのが、年金運用等を行う
機関投資家と、世界的な国際分散投資の流れを受けた
海外機関投資家です。

金融ビッグバンによる株式売買委託手数料の自由化など、
金融規制緩和が背景にあったことも影響しているでしょう。

外国人株主の増加は会社経営者に、ROE(株主資本利益率)
を重視した経営を迫り、業績や株価の低迷が続いた場合、
ウォールストリートルールの実行も辞さないといった、
厳しい姿勢を求め、その結果、経営のチェック体制が強化され
経営改善に向けた努力が進められることになりました。

※ウォールストリートルールとは、
投資収益率の低い企業を直ちに売却するということです。

中でも、近い将来の高齢化社会到来や
確定拠出年金(401k)の導入を考えると、
今後も増えていく年金を運用する機関投資家に、
「物言う株主」として、
コーポレートガバナンスの役割を果たして欲しい
という期待が高まっています。

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Photo by 2000ピクセル以上のフリー写真素材集

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次のページ  :日本版コーポレートガバナンスのあり方>

日本版コーポレートガバナンスのあり方

平成15年(2003年)4月に施工された改正商法では、
コーポレートガバナンスの強化を目指して、選択制で
「委員会等設置会社」という制度が導入
されました。
これまでのの監査役制度を廃止し、

◇取締役候補の決定をする「指名委員会」
◇取締役の報酬を客観的に評価して決める「報酬委員会」
◇業務を監督・監査する「監査委員会」(従来の監査役)

の3つの委員会を設置する米国流の
コーポレートガバナンスになっているのが特徴です。

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Photo by (c)Tomo.Yun

各委員会の過半数は社外取締役が入り、
企業内の業務は、取締役会が選任した執行役員が行うという、
社外からの監視の目経営と業務執行の分離というのが、
今までの監査役制度の会社(監査役設置会社)との大きな違いです。

最初は米国型企業統治を範としていましたが、
その米国も、エンロンやワールドコム事件を受けて、
従来のコーポレートガバナンス制度を巡る大議論が展開され、
改善に向けた法律(サーベンス・オクスリー法、SOX法、
米国企業改革法、Sarbans-Oxley act)

2002年に制定されていますが、
未だ深刻なダメージを拭い切れていません。

一方日本では、伝統的な日本型経営システムを採る
企業がまだ全体の7割を占めており、中には十分な
経営パフォーマンスを上げている企業もあることから、
コーポレートガバナンスのあり方を巡って議論が分かれましたが、

本来すべての企業に適したシステムなどあり得ず、
今後も改善・改革に向けた議論・実戦を続け、
常に進化していくことが望ましいでしょう。

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Photo by (c)Tomo.Yun

※元々は「会社はだれのもの?」という議論の際に
登場する言葉でしたが、
債権者や取引銀行、従業員や地域住民、
規制当局やマスコミ、業界団体や同業他社、更には地域社会等
幅広く利害関係者(ステークホルダー)との
関係のあり方を問う議論に発展しています。

 日本版SOX法(日本版 ソックス法)とは、
 従来のコーポレートガバナンスシステムでは、
 エンロンやワールドコム事件のみならず、
 相次ぐ会計不祥事やコンプライアンスの欠如を
 止められなかったために米国で制定された、

 サーベンス・オクスリー法(SOX法)の日本版です。

2008年3月決算期から施行予定です。
会計監査制度の充実と企業の内部統制強化を目指します。
日本版SOX法はITの活用がより重視される予定です。
(IT統制)

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Photo by (c)Tomo.Yun

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2006年07月11日

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、
一般に「法令遵守」と訳されています。

米国エンロン社・ワールドコム社の粉飾決算
エンロンの会計監査を受け持っていた
アーサー・アンダーセン会計事務所の監査不祥事、
日本では山一證券の特定顧客に対する損失補填
雪印乳業の食中毒事件、USJの不祥事、日本ハムの牛肉偽装事件、
つい最近ではマンション耐震強度偽装事件
ライブドアの粉飾決算などなど…。

不祥事が原因で会社が消滅しているケースもあります。

本来、法律を遵守するというのは、企業であれ個人であれ
当然のことなのですが、
敢えて「コンプライアンス」という言葉を用いなければならない程、
企業不祥事は後を絶ちません。

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Photo by (c)Tomo.Yun

企業の不祥事、言い換えればそれは
個人個人の倫理の欠如でもあります。

利益追求のためには何をやってもいいのではなく、
一人一人が高い倫理観を持って仕事に望まなければなりません。

大企業の不祥事は社会に与える影響も大きいのですから、
個々の社員は、そういうブランドを背負って立っているんだ
という自覚を、片時も忘れてはいけません。

株主の利益のため、またその維持増大のために
効率的な経営が求められる企業ですが、
効率を優先するあまり、モラルを欠いた
無理な経営をしていたのでは元も子もありません。

社会の信用を勝ち得て初めて企業価値が上がり、
結果株主価値も上がるのですから、

顧客や株主だけでなく、企業活動を行う上で関わる全ての
ステークホルダー(利害関係者)とコミュニケーションをとり、
健全で効率的な経営の維持に努めなければなりません。

また、ISO(国際標準化機構)の定める
ISO9001(品質マネジメントシステム)と、
ISO14001(環境マネジメントシステム)の両規格を
採用しているかいないかは、
グローバル化社会に向けて真摯に取り組んでいるかどうかの、
物差しになるでしょう。

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Photo by ★Freepict(フリーピクト)

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次のページ  :インセンティブプランとは>

インセンティブプランとは

インセンティブプランとは、
役員や従業員に刺激を与え、動機付けを行うことによって
社員の働く意欲を高め、会社の業績向上を図ろうというものです。

企業・会社というのが利益を追求する組織である以上、
そこに能力主義、成果主義が存在するのは、当然かもしれません。

優秀な人材を引き寄せ引き止め、能力を開発・活用しそして、
能力が及ばない社員には…
円満退社してもらう…。

少し厳しいようですが、効率的な経営を求められる企業にとって、
押し寄せる経済グローバル化の時代を生き抜いていくには、

能力主義・成果主義の考え方は不可欠なのです。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

優秀な人材を引き止めておくための
一番分かり易い制度が報酬制度でしょう。

会社業績連動賞与や個人業績連動賞与(ボーナス)、
社員持株会確定拠出年金、確定給付年金などの福利厚生、

株式の付与として、第三者割当増資、オーナー株式の譲渡、
新株予約権の付与としては、ストックオプションがあります。

 ※従来インセンティブプランの一つとして
 成功報酬型ワラントというのも利用されていましたが、
 平成14年4月の商法改正により、規制緩和が施された
 ストックオプションの影に隠れる形となりました。

 成功報酬型ワラントとは、
 一旦会社が新株予約権付社債を発行した後に
 新株予約権(ワラント、新株引受権ともいう)部分を買い戻し、
 これを社員に付与するというものです。
 擬似ストックオプションなどと呼ばれたりしています。
 
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Photo by (c)Tomo.Yun

珍しいところで、レストリクテッドストックというのもあります。

レストリクテッドストックとは、「restricted」に限られた、
白人専用の、狭い、部外秘の という意味があるように、
主に役員(エグゼクティブ)を対象とした株式譲渡です。

株式を貰い受けてからおよそ二年間は売却できないなど、
厳しい制限が付けられています。

ファントムストックというのも面白い制度です。
実際に株式が発行されることはなく株の配当にあたる物を、
ボーナスとして受け取る仕組みです。

未公開会社の間で、株式報酬を真似るために利用されています。
自社株連動型報酬ともいいます。

株式購入プランでは、社員は給料天引きを通して
自社株を割引価格で購入することができます。

ストックオプションと同様に税制上の優遇措置を受けることができ、
国税庁(IRS)の提示する要件に適合する株式購入プランは、
従業員株式購入プラン (ESPP、
Employee Stock Purchase Plans)と呼ばれています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

ストックアプリシエーションライト(株式評価益権、SAR、
Stock Appreciation Right)というのは、
ある一定期間の会社の株式価値に基づいて社員に報酬するという、
会社による誓約です。
ファントムストックと似ていますね。

ファントムストックと同じで、
SARは実際に株式を所有するのではなく、
社員は何かを手に入れるためにお金を出す必要はありません

この先も、優秀な社員を確保・維持していくために、
様々な報酬制度が出てくると思われます。

次に、インセンティブプランの中でも最も効果が高いと言われている、
ストックオプションを見ていきましょう。

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次のページ  :ストックオプションとは>

ストックオプションとは

ストックオプションとは、新株予約権の一種です。
会社役員や従業員が一定期間内(権利行使期間)に
予め決められた価格(権利行使価格)で、
会社から自社株を購入できる権利のことです。

※購入しなくても構いません。(権利放棄)
※権利行使価格のことを、ストライクプライスとも言います。

株価が行使価格を上回った時点で権利を行使し、
株式を売却してキャピタルゲインを得ることができるので、
社員の株価に対する意識が高まり、
会社の業績向上に努めようとするインセンティブ報酬として、
1990年代以降、主にハイテク関連企業で多く取り入れられました。

ストックオプション制度は、平成14年(2002年)の商法改正で
新株予約権の無償発行方式になるなど、

より使い勝手のいいインセンティブプランとなりました。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

それまで対象者が、自社の役員や従業員に限られていたのが、
子会社の取締役・従業員、更には取引先にも可能になりました。

発行済株式総数の1/10までとされていた
発行枠(付与株式数)も制限がなくなり、
株主総会における付与対象者の確定も不要になりました。

 ※従業員持株会は個人の貢献度等によって
 持株数を自由に調整できない点が、
 新株予約権等と異なっています。

会社は付与株式を、
新株発行にするか自己株式(金庫株)の交付にするかの選択を、
行使時点までに決めればよくなりました。

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権利行使期間も制限がなくなりました。

報酬額は株価上昇に連動しますが、与えるのは権利なので、
会社としてのコストは変わりません。

会社にとっては株価を利用した低コストの成功報酬制度といえます。
(税制上の優遇措置を受けるには無償発行でないといけないので、
ほとんどの場合、会社が負担する費用は0です。)

※国税庁(IRS)の定める一定の適格要件を満たす
ストックオプションの場合(税制適格ストックオプション)、
権利保有者は、権利を行使した時点では通常の租税がかからず、
株式を売却もしくは譲渡された時にのみ課税されます。

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ストックオプション制度の導入は、会社が企業価値や株主価値
強く意識しているというアナウンス効果(PR)にもなり、
社員のやる気が高まり実際に株価が上昇すれば、
既存株主にとっても、大きなメリットとなります。

しかし従業員持株会など福利厚生と違って
インセンティブプランとしての賞与なので、
会社にとって有益な人にしか付与されないという、
格差が生まれます。

権利保有者の利益が株価上昇と連動しているため、
不当な決算処理をする人も出てくるなど、
モラル低下の危険性があります。

権利が行使されると、
時価よりも低い株式が発行されることになり、

既存株主にとっては面白い話ではありません。
            (株式価値の希薄化)

会社の金庫株の交付という形を取るにしても、
時価よりも低い価格での売却になるため、
その分企業価値はマイナスになります。

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発行枠の制限が無くなったと言っても、
その発行にあたっては、
企業は十分な注意を払うべきでしょう。

オプションを行使して利益が出る状態をインザマネー、
設定価格(行使価格)の方が時価より高いか同じで、
儲けが全く無い状態をアンダーウォーターといいます。

ハイテク産業の活力が衰えた米国では、
マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は2003年7月に、
「この9月から、ストックオプションは一切発行しない」
と発言しています。

ストックオプション制度の抱える問題点については、
次の項目で取り上げます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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精彩を欠くストックオプション制度

株価が安い時に、または上場前に会社が購入しておいた
自社株(金庫株)を優秀な社員に付与し、
会社の業績向上によって株価が上昇した時に権利を行使し、
株式を売ってキャピタルゲインを得るというのは、
会社が上り調子で成長を続けている時には
大変有効なインセンティブプランです。

2000年分の高額納税者では、上位100人のうち
ストックオプション長者が前年の1人から10人に増えました。
外資企業に勤める普通のOLが、ストックオプションを行使して、
億ションを手に入れたという話もあります。

しかしITベンチャー企業の繁栄もピークを過ぎ、
長引く景気の低迷で株価は低水準を維持したまま…、
インセンティブプランとしてのストックオプション
(これをインセンティブストックオプション、ISOと言うこともあります。)
は、その魅力を失いつつあるのです。

米国でも2000年初めをピークに、ハイテク企業の株価は下降し
現在も低迷を続けています。

3軒に1軒の家庭がストックオプションを保有すると言われた
シリコンバレーオプショネア(ストックオプション成金)

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マイクロソフト創立当初の株をピークの前にオプション行使し
売却したマイクロソフトミリオネア
入社のタイミングが悪かったばっかりに、「勝ち組」の隣で
働かなければならない大量の「負け組」

オプションを行使しても儲けが出ないアンダーウォーター
状態が続く現状で、様々なあつれきが生じています。

かつては多くのアメリカ人の憧れであったハイテク産業ですが、
夢がしぼんだ今、新たな段階への模索が始まっています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

エンジニア以外の、いわゆるマーケティングガイと言われる人達は
ハイテク産業を去り、残るのはコアなエンジニア達。
結果、草創期のような技術重視路線へと回帰が進んでいます。

一方オプショネアとなった人達は投資先を求めて、
かつての同僚にスピンアウトを促す事もあるでしょう。
そうなると、草創期のような起業ブームが再び起き、
ハイテク産業がまた輝きを取り戻すかもしれません。

※スピンアウトとは、現在勤めている会社からノウハウと
アイデアを持ったまま飛び出して自分の会社を設立すること、
また企業内の事業部門や事業シーズ(事業化されずに
埋もれている研究成果やアイデアなど)を切り離し独立することです。

※スピンアウトが親会社との関係を絶ちたいと思うのに対し、
スピンオフとは、親会社との係わりを持ち続け、その経営資源を
最大限に活用しながら事業展開を進めていこうという手法です。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

またストックオプション売却益は、原則として給与所得とすると
税法上定められていますが、これに関しては、
国税当局の判断が一時揺らいだため、多くの訴訟が起こりました。

海外企業が、日本の子会社の社員に付与した
ストックオプションで得た利益は、課税当局は1998年分までは、
税額が給与所得の約半分になる一時所得と認めていたのに、
その後国税当局が、給与所得に統一するよう指導を始めたためです。

方針変更の際に法律が作られるべきだったのにそれも無く、
方針変更前に遡って約2倍の税金を納めることになった
当事者たちの大きな不満を買っています。

※現在、税制適格に見合うように付与される
(無償発行)ケースがほとんどですが、

税制上の優遇措置が受けられないと、
オプションを行使した時点(株式を購入しただけで
まだ売っていない段階)でも所得税と住民税がかかります。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

そしてストックオプションの魅力が薄れるもう一つの大きな要素が、
経費参入が義務づけられるかもしれないということです。

今までストックオプションを無償給付した際に、
オフバランスされていたものをオンバランスにするという変更です。

※オフバランスとは、事業運営に活用している資産・負債であっても、
貸借対照表(バランスシート)には計上されない状態のことです。
会計上のリスクが存在する取引をバランスシートの外に
出すことで、企業価値を高めることができます。

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        現在の会計制度では、
        ストックオプションをどれだけたくさん発行しても
        人件費として計上する必要はないので、
        利益を大きく見せることができるのです。

しかし米国でも、長引く株価低迷で年金基金などの大口投資家らが
この会計システムを強く批判し、2001年のエンロン事件で、
一部の役員らが所持していた多数のオプションを
株価破綻前に売り抜けたこともこれに拍車をかけました。

考えてみれば、企業価値を正しく判断するには、
ストックオプションを人件費としてバランスシート
に計上するのは、至極当然のことかもしれません。

  財務内容は透明さを増しますが、
  企業の利益は減って見えることになり、
  株価にも影響が出てくるでしょう。

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IRとは、米国に見るIRの変遷

IRとは、
Investor Relations (インベスターリレーションズ)
の頭文字をとった略語で、
株主や投資家にとどまらず企業活動を行う上で
全てのステークホルダーとの間に良好な関係を築き、
資本市場で正当な評価を得るための企業の広報活動です。
ステークホルダーの求める情報を
自発的に開示する活動のことです。

 ※ステークホルダーとは…利害関係者のことです。

IRの目的は、様々なIR対象者の声に耳を傾け
求める情報を提供して信頼関係を築き、
公正な企業価値(株式価値)評価を受けることです。

提供する情報としては、自社の経営理念や経営戦略、
業績・財務内容、配当・投資政策などがあげられます。

最近はプラスの情報だけでなく、企業にとって
マイナスの情報も流す企業が信頼を得て、
株価も高く評価される傾向にあります。

逆にIR活動に消極的な企業は、市場の信頼を失い
必要以上に株が売られるといったこともあり、

適正な株価を形成するために欠かせない
戦略的な企業活動と位置付けるところが増えています。

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IRの概念には長い変遷の歴史がありますが、
言葉としては、1953年にGE社(ゼネラルエレクトリック)が
株主とのコミュニケーションを図る専門部署として
IR部(Investor Relations Services Department)
設置したことに由来します。

当時の時代背景としては第二次世界大戦が終わり、
米国では経済拡張が進む中、個人の資金が株式市場に流れ込み、
富裕層からなる従来の株主とは異なる対応が
求められるようになりました。

 一方この頃、経済成長の恩恵を受けた米企業が企業年金を設立し、
 好況な株式市場に吸い込まれるように
 年金は株式投資を積極的に運用したのです。
 そしてここに、企業年金という機関投資家が誕生しました。

GEでは「株主総会対応」「年次報告書の発行」
「コミュニケーションの効果測定や態度調査」といった
いわゆるIRの概念を作り出しました。

ただ当時のIRは、まだPR(企業広報)の色彩が濃いものでした。
現に個人投資家の”対応”窓口として担当にあたったのは、
PR部門でした。

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1969年、全米IR協会(NIRI、National Investor Relations
Institute)が設立されました。

1970年代になるとIRは、台頭してきた機関投資家対策に
追われるようになります。

機関投資家は主に企業年金を運用し、その際には
ウォールストリートルールと呼ばれる厳しい姿勢で臨んだため、
投資判断のための情報提供業務が増大し、
機関投資家の売買行動に大きな影響を与える
アナリストとの面談・説明会には神経を使わざるを得ず、
それに伴い、アナリストの地位も高まっていきました。

※ウォールストリートルールとは、
投資収益率の低い企業を直ちに売却するという、
比較的短期間での株式の売買で
投機的な投資スタイルのことです。

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しかし徐々に停滞してきた米経済の下、株式市場も低迷し
企業年金の資産が大きく損なわれる事態になったため、
政府は企業年金制度の加入者を保護するために
1974年、エリサ法(ERISA、従業員退職所得保障法)を制定し、
プルーデント・マン・ルールの適用と、
合理的な投資行動を取ることが、
企業年金の受託者責任であることを明確にしました。

日本の年金基金に一律に課せられている
リーガルリスト(資産保有制限枠)とは違い、
委託者が決めた範囲内で自由に投資判断できる一方で、
受託者としての責任を明確にするものです。

※プルーデント・マン・ルール(Prudent Man Rule)とは、
注意義務と忠実義務からなっており、

年金資産の運用にあたって、
プルーデントマン(思慮深い人)の行動を基準に
受託者が責任を果たしているかどうかを判断します。

リーガルリストルールに比べて、
受託者に裁量が委ねられている分、柔軟な基準です。

※リーガルリストルールとは、
年金運用の投資対象資産や運用割合を法律等で具体的に示し、
それを順守していれば
受託者が責任を果たしているとする考え方です。
「5:3:3:2」は代表的なリーガルリスト<です。

合理的な投資行動、すなわちそれは分散投資ということです。
大規模年金基金の資産運用は、長期安定性・安全性に配慮した
インデックス運用の採用に傾斜していくようになりました。

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1980年代になると、企業年金はますます規模が巨大になり、
それ自身の売買で相場が大きく変動してしまうため、
パフォーマンスが悪くなり、
ポートフォリオの理論を使った長期分散投資が主流になります。

ところが、長期保有の投資家が増えるということは、
それだけ株価の値動きが乏しくなるということで、
市場の評価をさして気にする必要のなくなった経営者は、
株主価値を考えない傲慢な経営姿勢も見せるようになりました。

また1980年代は、M&A(企業の合併吸収)が急増し、
最初は、経営効率の悪い企業が合併によって淘汰されると
好意的に受け取られていた買収ですが、80年代後半になると、
敵対的買収から身を守るためのポイズンピル
ゴールデンパラシュートプロキシーファイト等は
企業のエネルギーを無駄に消耗させ、
株価にもマイナスであるという事が次第に明らかになってきました。

企業サイドとして、機関投資家による
これら買収防止策の廃止要求や、事前の情報開示に
答えることは避けて通れず、
買収防衛のためにも株主価値は守らないといけない、
すなわち株主の声に耳を傾けるIRは、
今まで以上に重視されるようになりました。

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※ポイズンピル(毒薬条項)とは、
敵対的買収に対する防衛策として、
予め役員や従業員に拒否権を与えておいたり、
既存株主に新株予約権を付与したりして、
敵対的買収が起こった時にオプションを行使して
買収コストを増加させたり、買収者の持株比率を低下させ
株式価値を希薄化することで、
買収する意欲を削ぐように仕向ける策のことです。

敵対的買収が行われることが分かった時点で発動されるので、
トリガー(引き金)条項とも言われます。

※フジサンケイグループとライブドアによるニッポン放送の
M&A(企業の合併・買収)合戦で、
ニッポン放送がフジテレビに対して新株予約権を発行したのは、

「株主が取締役を選ぶ株式会社制度で、取締役が
株主を選ぶのは尋常ではない」として

これはポイズンピルとは別物としています。

※敵対的買収が盛んな本家アメリカでも、
ポイズンピルが実際に使用されたことはほとんどありません。
よく核兵器に例えられ、
あくまで抑止力として有効だということです。

※プロキシーファイトとは、委任状争奪戦、委任状闘争などと
訳されます。
プロキシとは代理のことで、
株主に議決権行使の委任状を書いてもらい、この委任状
(株主の権利)を集めるための戦いをプロキシファイトと言います。

※ゴールデンパラシュートとは、
買収される企業の経営陣や取締役が、
予め巨額の退職金などの利益を受け取れるように
定款で定めておくことで、
敵対的買収を実施すると金銭的に大きな負担がかかるようにして、
買収の魅力を低下させ、
買収意欲を削ぐことを目的とした買収防衛策です。

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米国に見るIRの変遷、エイボンレター公表から

1988年、企業年金基金の監督官庁である労働省
エイボン社に対して送ったエイボン・レターを公表し、
それまで禁じていた議決権行使を解禁し、
「企業年金における議決権行使は、年金資産等の運用に伴う
受託者責任の一部である」としました。

その結果、1990年代は議決権を行使する「物言う機関投資家」が増え、
社外取締役の派遣や、経営不振企業の
CEO解任動議の提案に対応するなど、
IRは機関投資家を意識して展開されるようになっていきます。

機関投資家がとった、こうした株主利益を追求した行動を
株主行動またはガバナンス行動と言います。

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しかし議決権を実際に行使する機関投資家は、
カルパースに代表される公務員退職年金基金や
私学共済年金基金等、一部のファンドに限られていました。
投資先企業とスポンサー企業の密接な関係が、
年金基金の企業に対する株主行動を
暗黙のうちに妨げていた
のです。

投資先企業と利害関係のないカルパースのような年金基金でさえ
様々な圧力をかけられました。
物言う株主(機関投資家)はアメリカでも煙たい存在だったのです。

年金基金による株主行動(議決権行使)
モニタリングを改善したのか、
経営効率の改善に果たして結びついたのか、
については議論が分かれるところですが、
こうした直接的な経営への関与は、会社経営陣に
少なからず緊張感を与えたことは間違いないでしょう。

社外取締役を中心とする取締役会が、
実際の経営者(執行役員)を監督及び統治する体制、
いわゆるガバナンスとマネジメントの分離
この頃から育ち始め、米経済は急速に効率化及び
合理化
されていきました。

90年代半ばには、
インターネットの普及によりオンラインで売買をする投資家、
ストックオプションを付与された
従業員投資家も登場するなど、投資家の幅が広がりました。

利益を追求するだけでなく、環境や社会問題に対する
企業の姿勢を意識した投資行動は、
社会的責任投資(SRI)という投資スタイルを生み出し、
IRにどれだけ熱心に取り組んでいるかが、
投資判断の一つの材料になってきたのもこの頃からです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

2000年にレギュレーションFD(レギュレーションフェア
ディスクロージャー
、Regulation FaiR Disclosure)が
制定されたのは、
拡大する個人投資家と機関投資家間の情報ギャップが、
無視できない大きさにまで広がっていたことにあります。

こういう情報格差が、
インサイダー取引の温床になっているとして、SEC
(米証券取引委員会
、U.S. Securities and Exchange Commission)
が制定したレギュレーションFDは、

特定の関係者のみに重要事項を意図的に開示してはならない旨、
もしも意図せざる開示が行われたと知った場合は、
速やかに公表する旨が書かれています。

情報を公平に開示するのにうってつけなのが
インターネットの利用です。
企業はこぞってIRコンテンツをホームページに加えました。

大和インベスター・リレーションズでは、
「インターネットIR・ベスト企業賞」なるものも設けています。

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1980〜90年代のIRは、まだPRの要素が強い時代でした。
NIRIが1988年に定義した際も、IRは、
企業を投資家に売り込むマーケティング活動としています。

しかし2000年代に入り、景気低迷の中発生した
エンロン社やワールドコム社の粉飾決算スキャンダルを受けて
2002年に制定されたサーベンス・オクスリー法は、
コンプライアンスを最重要視するものへと
重点をシフトしていきます。

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Photo by 2000ピクセル以上のフリー写真素材集

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IR、日本の現状は

日本のIR(インベスターリレーションズ)はというと、
1970年代頃から海外で資金調達をする企業の間で
年次報告書の発行や投資家向け説明会等が実施されるようになり、
1980年代後半にはIR担当部署を設置する企業も増え始めました。
1993年には日本IR協議会が設立されています。

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Photo by (c)Tomo.Yun

この数年でIRという言葉もかなり浸透してきたとは言え、
未だにIRとPRの違い>が分からないとか、
特に困るのは会社において、トップマネジメントが
IRの重要性を理解していない場合です。

※IRとPRの違いは、PRが自社の製品をより多くの消費者に
購入してもらうための販促活動であるのに対し、IRは、
各ステークホルダー(利害関係者)の求める情報
(自社にとって不利な情報も)を提供して信頼関係を築き、

資本市場で公正な企業価値(株式価値)を得るための広報活動です。

IRが総務部や広報に所属している会社がまだ多いのは、
日本がアメリカに比べてまだまだ遅れていると言わざるを得ません。

IRの重要性について
社内で共通の認識(コンセンサス)が得られていないと、
IR担当者はその会社でスムーズに仕事を進めることが出来ず、
正しい情報を集めることもできません。

理想的なIRは、各ステークホルダーが求める情報を
最適なタイミングで提供することであり、

短期的なビジョン、長期にわたるビジョン、両方を示すには
その会社がしっかりとした経営理念を持っているのかが
問われることとなります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

しかしながら、いいIRの会社がいい会社かと言うと…
2005年4月に悲惨な鉄道事故を起こしたJR西日本も
IRという観点から見ると、非常に優秀な会社だったのです。

リコール隠しで大問題になった三菱自動車も、1999年に
IR優秀企業賞を受賞しています。

JR西日本も三菱自動車も自社にとって不利な情報は
流していませんでした。

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Photo by (c)Tomo.Yun

企業にはバランスシートに表れることのない価値ある無形資産が存在し、
中でもブランド価値の閉める割合は大きい、
というのは昨今人気のある考え方ですが、
長い時間をかけて構築したブランドが崩壊する時は一瞬です。

確固たる経営理念の元、正しい情報を開示し、
各ステークホルダーと常に良好な信頼関係を維持し、
本当の意味で「良い」IRを続けていくことは、
金融・経済のグローバル化が進む現代において、
欠かせない経営戦略である事は疑う余地もありません。

社会的責任、説明責任(アカウンタビリティ)を果たさない
企業の存在は、IRへの信頼を損ない、

せっかく少しずつ復活しつつある株式市場、そして
個人投資家の積極的な投資行動を
手控えさせることになっています。

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SOX(サーベンス・オクスリー)法とは

SOX(サーベンス・オクスリー)法とは、
エンロン事件やワールドコム事件など
1990年代末から2000年初めにかけて多発した
不正会計スキャンダルを受けて、
監査制度やディスクロージャーの強化・徹底、
コーポレートガバナンスのあり方等に関して
抜本的な改革を行うことを目的に、
2002年に制定された
米国連邦法で、
1933年の証券法、1934年の証券取引所法制定以来   
最大の変更といわれています。

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正式には Public Company Accounting Reform and Investor
Protection Act of 2002(上場企業会計改革および投資家保護法)
という長い名前が付いていますが、法案を連盟で提出した
ポール・サーベンス(Paul Sarbanes)上院議員と
マイケル・G・オクスリー(Michael G.Oxley)下院議員の名前から
取って、サーベンス・オクスリー(SOX)法と呼ばれています。

日本では普通、企業改革法と訳されています。

エンロンの巨額粉飾決算スキャンダルで、
エンロンを担当していた名門アンダーセン会計事務所が、
たった1通のEメールで罪が確定し消滅したことは、
全米に大きな衝撃を与えました。

当初はすべての財務諸表を自動的に生成できるようにと
法案制定に向けて準備が進められていましたが、
財務処理の自動化で大きな負担を強いられる
一部大手銀行の抵抗にあい、最終的には、
企業の内部統制というやや広い解釈を伴ったものになりました。

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ところで、このSOX法というのは、
エンロンやワールドコム事件で突如浮上してきたのではなく、
財務諸表の不正に対する問題は実は昔からあったのです。

米国では、財務諸表における不正を防止するための議論は
1930年代から活発に行われてきたのですが、
コスト負担を強いられる経営者たちの反発に遭い、
法制化には至りませんでした。

そんな中ウォーターゲート事件が発生。
1977年には海外不正支払い防止法(FCPA)
という法律が成立しました。

そしてこのFCPA制定に
加速を付けたのはロッキード事件だったのです。

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ウォーターゲート事件を調査していたSEC(米証券取引委員会)は、
米国企業が海外で巨額の賄賂取引を行っていた事実を突き止めます。

これは、ウォーターゲート事件の次のネタを探していた
米メディアに格好の材料となり連日大きく取り上げられました。

当時米国には、国内の政治化・公務員を対象とした
企業への賄賂を取り締まる連邦法はありましたが、
海外賄賂を規制する法律はありませんでした。

新法の成立を求める声が高まる中、抜本的な改善の
必要性を感じたプロキシマイヤー上院議員が旗振り役となって
FCPA関連法案を提出すると、即座に議会を通過、
カーター大統領の署名によって1977年12月、
世界で初めての海外賄賂を犯罪とした法律ができたのです。

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FCPA(Foreign Corrupt Practices Act)は大きく分けて、
会計処理条項と賄賂禁止条項の2つから成っています。

巨額の賄賂はどうやって生み出されたのか、
調査を進めた結果、企業が帳簿を巧妙に粉飾し
裏金を捻出していたことが分かり、
会計処理にメスを入れることによって
賄賂の元を根絶しようとしたわけです。

会計処理条項では、経営者の管理の下
社内の資金の流れを正確に記録し、
発生する支払いについて不正な意図がないことを
いつでも証明できる内部会計管理制度を
創設・維持することを求めています。

FCPA制定の本当の狙いは企業の透明度と
アカウンタビリティを高めることにあったのですね。

厳しい会計処理によって裏金の出所を突き止めれば、
賄賂も根絶できるというのが法案作成にあたっての認識でした。

しかしこの法律は、
「経営者の管理の下」という所に問題がありました。

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SOX法では、企業は有価証券報告書など開示義務のある
財務諸表が正しいと宣言することが求められ、
財務諸表に関わる内部統制について、
「外部の監査人による監査」が要求されています。

  ※SOX法では内部統制の定義を、
  「財務報告に関連する会計処理が
  適正に行われていることを保証する活動」
  としています。

ところでこの内部統制ですが、
言葉として少し分かりにくいですよね。
実はアメリカでも内部統制の定義については
会計士や企業、規制当局がそれぞれの立場で
議論を続けてきました。

次の項目では、トレッドウェイ委員会支援組織委員会
COSO、コーソー)が1992〜94年に公表した
報告書(COSOレポート)を取り上げ、

内部統制について見ていきましょう。

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COSO(コーソー)とは

COSO(コーソー)とは、
トレッドウェイ委員会支援組織委員会(The Committee of
Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)
の略称です。

金融機関を含む多くの企業の経営破綻、相次ぐ粉飾決算、
ウォーターゲート事件調査に端を発した米企業の海外での
賄賂取引(1976年ロッキード事件)などなど…。

1970年代から1980年代にかけて、米国の社会・政治問題は
深刻化していきました。

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危機感を強めた米国公認会計士協会(AICPA)は、
米国会計士学会(AAA)、米国財務担当経営者協会(FEI)、
米国内部監査人協会(IIA)、米国会計人協会(NAA、
後に米国管理会計人協会と改称)に働きかけ、

産官学共同の研究組織として1985年
「不正な財務報告に関する国家委員会(the National
Commission on Fraudulent Financial Reporting)」を組織し、
委員長J.C.Treadwayの名前からトレッドウェイ委員会と呼ばれました。

トレッドウェイ委員会は、1987年に
「Report of the National Commission on Fraudulent Financial
Reporting」(不正な財務報告に関する国家委員会のまとめ、
俗にトレッドウェイ委員会報告書とも言われています。)
を最終報告書としてその活動を終えます。

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そもそも、トレッドウェイ委員会は不正な財務報告の原因を把握し、
発生を減少させるべく勧告を行うために設けられた組織でしたが、
企業内の仕組みの在り方についての議論・検討も重ねていました。

がしかし、内部統制の概念をどう定義し、
具体的にどう共通の枠組みを作るかという課題については、
COSOに残されることになりました。

COSOは元々トレッドウェイ委員会を
財政的に支援(サポート)する団体
でしたが、
最終レポートの勧告を受けて本格的に活動を開始します。

クーパース・アンド・ライブランド(現プライスウォーターハウスクーパース)
に委託して1992〜1994年に
「Internal Control-Integrated Framework」
(内部統制の統合的枠組み、通称COSOレポート)を公表します。

・内部統制の要約
内部統制のフレームワーク(枠組み)
・外部関係者への報告
・内部統制評価ツール
以上1992年公表
・外部関係者への報告の追補(1994年)

の5つからなる文書で、
中でも内部統制のフレームワークはあまりにも有名で、
COSOフレームワークと呼ばれています。

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Photo by esupply

COSOフレームワークでは従来、
財務会計分野からの視点のみで語られ、
財務報告に関連する会計処理の適正性確保を目的とする活動、
とされていた内部統制の概念を一新して、次のように定義しました。

◇内部統制の定義及び3つの目的カテゴリー

内部統制は、以下の範疇(カテゴリ)に分けられる目的の達成に関して
合理的な保障を提供することを意図した、
事業体の取締役会、経営者及びその他の構成員によって
遂行されるプロセスである。
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1.業務の有効性と効率性

2.財務報告の信頼性

3.関連法規の遵守(コンプライアンス)

◇内部統制の5つの構成要素

1.統制環境 (control environment)

2.リスクの評価 (risk assessment)

3.統制活動 (control activities)
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4.情報とコミュニケーション (information and communication)

5.モニタリング(監視活動) (monitoring activities)

これら5つの構成要素が経営管理の仕組みに組み込まれて
一体となって機能することで、

企業目的を達成するために欠かせない内部統制の仕組みを
構築することができます。

このCOSO内部統制のポイントをまとめた図を
COSOキューブと言い、
内部統制は、一部の部門や活動だけではなく
企業全体にかかわるものであることが示されています。

またCOSOフレームワークは、各カテゴリ、
各構成要素を基準に、経営者を初めとした組織構成員に
内部統制を徹底させるリファレンスモデルでもあります。

※リファレンスモデルとは、従来のようにデータを一ヶ所に
移動させて集中管理するのではなく、
データは発生した地点そのままに置いておき、必要な時に
参照(リファレンス)する分散データ管理モデルのことです。
一旦、各システムがリファレンスモデルの仕組みを整備すれば、
同じ仕組みを有する全てのシステムと接続可能となります。

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Photo by LinkStyle

経営管理の枠組みそのものが内部統制であるという概念は、
金融業界から他の産業界まで幅広い分野に受け入れられ、
COSOの内部統制フレームワークは、
各国の様々な規制の中にも取り入れられ、
内部統制の事実上のグローバルスタンダードとなっています。

米国公認会計士協会がCOSOフレームワークに基づく
監査基準SAS78号を公表。(1995年)

情報システムコントロール協会(ISACA)が
システム監査と評価のガイドラインである「COBIT」を策定。

※COBITとは、米情報システムコントロール協会が提唱する
ITガバナンスの成熟度を測るフレームワークです。

カナダでは、カナダ勅許会計士協会の統制規準委員会が発表した
「CoCo−統制モデル」(1995年)

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Photo by (C)PictureBox

オーストラリアでは、オーストラリア内部監査人協会が発表した
「ACC−オーストラリア統制基準」(1998年)

イギリスでは、バーゼル銀行監督委員会が公表した
「BIS内部管理体制フレームワーク」(1998年)
※国際決済銀行(BIS、Bank for International Settlements)は、
スイスのバーゼルに本部があります。

同じくイギリスで、イギリス・ウェールズ勅許会計士協会の
コーポレートガバナンス委員会がロンドン証券取引所と
協力して制定した
「ターンバル・レポート」(1999年)

日本でも1951年に当時の通産省が
「企業における内部統制の大綱」を公表していますが、

2003年6月、新しい内部統制のフレームワークを示すため、
経済産業省のリスク管理・内部統制に関する研究会が

「リスクマネジメントと一体となって機能する内部統制の指針」、
日本版COSOを公表しました。

日本の「財務報告に関わるる内部統制の評価及び監査の基準(公開草案)」
(企業会計審議会,2005年7月公表)における内部統制の概念も

COSOフレームワークを基礎としています。

※プライスウォーターハウスクーパースとは、
アメリカ4大会計事務所の1つです。

COSOは、スモールビジネス向けの
内部統制フレームワークの策定にも取り掛かっています。

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Photo by かもめ工房

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日本版SOX法とは

日本版SOX法とは、
相次ぐ会計不祥事やコンプライアンスの欠如などを防止するため、
2002年7月に米国で誕生したSOX法
(サーベンスオクスリー法、通称企業改革法)

日本版です。

会計監査制度の充実と企業の内部統制強化を目的として、
早ければ2008年3月決算期から、
証券取引法(日本版SOX法)
修正版が導入される見通しです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

日本版SOX法では米国版と比較して、
ITの利用とITによる統制(ITガバナンス
より強調されています。

COSOレポートの内の内部統制のフレームワーク(枠組み)、
俗にいうCOSOフレームワークでは、
内部統制の構成要素は5つでしたが、
日本版SOX法では6番目に「ITの活用」
加えられています。

「情報」が「いつ」「誰に」伝達され、
「誰が意志決定したか」を随時記録することは、
今後の企業活動で欠かせない業務となるでしょう。

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Photo by (c)Tomo.Yun

この内部統制の枠組みは、
これまで性善説を前提としてきた日本企業に
性悪説を導入するシステムですから、
社員のモチベーション低下を懸念する声も聞かれます。

また、ITで全てを管理しないといけないため、
企業にとっては莫大な負担増になり、
経営への影響が心配されています。

アメリカでは膨大なコスト負担に耐え切れず、
株式公開をやめて
非公開企業に戻るというケースも出ています。

またITベンダー各社では
業務ソフトやシステム、セミナー等、
既に熾烈な競争が始まっており、
それに伴う株価の動きにも目が離せない2006年になりそうです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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ISOとは

ISOとは世界の規格を統一するための機関のことで、
International Organization for Standardization、
日本語では国際標準化機構と訳されています。

電気技術分野を除く全産業(鉱工業、農業、医薬品等)に関する
国際規格の策定及びその利用促進が目的で、
1947年2月に民間・非営利団体の国際機関として発足しました。

本部はスイスのジュネーブにあります。

略称が「IOS」ではなくて「ISO」になったのには
いくつかの説があります。

ギリシャ語で「相等しい」「一様性」という意味を持つ
「isos(イソス)」から来た説、

ギリシャ神話の名を借りたという説、
前身の機関ISA(万国規格統一協会)に
呼び慣れているからという説、

などが知られています。

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Photo by esupply

ISOの前身は1928年に設立されたISA(万国規格統一協会)ですが、
国際標準化機関としてはIEC(国際電気標準会議)の方が古く、
1908年に成立しています。

JIS規格というのが日本で販売される製品の標準的なサイズや
最低限必要な安全性を定めた規格の一種ですが、
このように世界各国でその国ごとの規格が存在するのは
貿易、経済取引を行う上で大変不都合です。
そのため世界規格の標準化が進んできたのです。

金融・経済のグローバル化が進む現代では、
ISOやIEC(国際電気標準会議)などの国際規格が
そのまま国内規格化される時代となりつつあります。

しかし現実には、ISOやIECなどが制定した
ディジュール標準(公的標準)と、

マイクロソフトの”ウィンドウズ”のような
デファクトスタンダード(事実上の標準)が

存在するのも事実です。

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Photo by (c)Tomo.Yun

公的標準は当然の事ながら透明性があってオープンですが、
標準化に時間がかかるという欠点があります。

それに比べてデファクトスタンダードは
時間はかかりませんが
勝者が市場を独占することになり、

情報公開において透明性を欠き閉鎖的です。

また最近では、WTO/TBT協定などの影響で
ディジュール標準化も無視できない状況になりつつあります。

 ※WTO/TBT協定とは…まずTBT協定とは、
 1979年に国際協定として合意されたGATTスタンダードコードが
 1994年にTBT協定として改訂合意され、
 翌年WTO協定に包含されたものです。
 TBT協定はWTO一括協定となっており、
 WTO加盟国全てに適用されます。
 
要するに、ISOなどで定められた規格は
国内規格として取り入れないといけないという協定です。

※GATT(ガット)とは、1947年に調印された
関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on
Tariffs and Trade)の略称です。

自由貿易の促進を目的として、
200件以上の経済紛争も処理してきましたが
1986年〜94年にかけて交渉が行われたウルグアイ・ラウンドの結果、
GATTを拡大発展させる形で 1995年、
モノだけでなくサービス、知的財産権・知的所有権までもカバーした
WTO(世界貿易機関)が発足し、その役割が移っていきました。

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そしてこのディジュール標準の分野でも
建前は建前として、
本音では世界標準化を狙って
地域や国家がしのぎを削っているのが現状です。

ISO9000シリーズではEU統合の時期ということもあり、
ヨーロッパ主導で国際標準化が進められた経緯もあります。

WTOが公式オブザーバーとして認めた国際標準化機関には
次のようなものがあります。

1.国際標準化機構(ISO)
2.国際電気標準化会議(IEC)
3.国際電気通信連合(ITU)
4.FAO/WHO合同食品委員会(CODEX
5.経済協力開発機構(OECD)
6.国際獣疫事務局(OIE)
7.国際法定度量衡機関(OIML)
8.国連欧州経済委員会(UNECE)

ヨーロッパでは、ISO、IEC、ITUに対してそれぞれ
CEN(欧州標準化委員会)、CENELEC(欧州電気標準化委員会)、
ETSI(欧州電気通信規格協会)を設けていて、
国際標準化に対する強い執着心が見て取れます。

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日本もこうした流れに後れを取ることなく、
国家戦略の観点からも
積極的に国際標準化活動に参加するべきでしょう。

ISOで有名な標準化規格には「イソねじ」と呼ばれる
ねじの規格があります。

その他代表的な規格として、写真フィルム感度の規格、
クレジットカードの寸法規格などがありますが、
1987年に規格化されたISO9000シリーズは
従来の製品に対する規格化ではなく、

企業の管理体制(マネジメント)に関する規格化である点が
大きく異なっています。

次の項ではマネジメントシステムについて見ていきましょう。

   ※「ISO9000シリーズ」は2000年版からは
   ISO2000ファミリーと呼び方が変更されました。

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次のページ  :マネジメントシステム、PDCAサイクルの活用>

マネジメントシステム、PDCAサイクルの活用

マネジメントシステムとは、
株主のために効率的な経営を求められる企業にとって
なくてはならないものです。

収益性、競争力、成長性、グローバル化…
企業が直面する様々な課題に取り組んでいくには
より良いマネジメントシステムがあった方が、
楽ですし、プラスになります。

本来経営目標を達成するための仕組みやルールといったものは、
どの会社にも会社独自のものが存在しているはずですが、
ISOはこのマネジメントシステムに対して、
”このように取り組んでください”と様々な注文を出しているのです。

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代表的なものに、
PDCAのサイクルをまわして継続的改善を図りなさい
というものがあります。

PDCAサイクルとは、

◇プラン(Plan:計画)

経営者は会社経営のために経営方針や経営目標を立て、
経営目標を達成するための計画を立案し、
会社運営をスムーズに進めるための様々な手順やルールを決定します。
業務計画書や業務マニュアルといった文書は、
この段階でアウトプットとなります。

◇ドゥー(Do:実施)

Pで立てた計画や手順・ルールに従って確実に実施します。   
    
◇チェック(Check:監視・測定・分析)

手順通りに実施した結果、 目標とする仕事の結果が出ているか、
手順通りに行っても業務上発生する問題については原因を分析します。

◇アクト(Act:改善)

チェックして分析した結果から、仕事の進め方を改善したり、
計画書の内容を見直したりします。

→その結果活動はPに戻り、新しい計画書や手順書が作成されて
  実施、チェック、改善と循環を続けます。

こうしたPDCAサイクルを通して企業目標を達成するよう、
継続的に問題点を改善していくことを
ISOのマネジメントシステムは求めているのです。

ISOのマネジメントシステム認証を得るためには、
各ISO規格の固有の要求事項への適合はもちろん、
このPDCAサイクルを回し続けて行く企業であることを
審査で証明できればいい訳です。

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マネジメントシステム規格には、有名なISO9001や
ISO14001以外にも様々な種類の規格があります。
主なものを上げてみます。

品質マネジメントシステム規格(QMS:ISO9001)

顧客満足の向上を目指し、顧客の要求する製品・サービスを提供するため、
継続的にマネジメントシステムを改善し続けることを求めた規格です。

環境マネジメントシステム規格(EMS:1SO14001)

組織の活動、製品・サービスが直接又は間接的に
環境に与える影響を低減し、
環境への悪影響を与える事故の発生を予防するため、継続的に
マネジメントシステムを改善し続けることを求めた規格です。

◇自動車業界特有のマネジメントシステム規格(QS9000)

米国3大自動車メーカー(ダイムラークライスラー・フォード・
ゼネラルモーターズ)
が中心となって策定した国際規格です。

従来はこの3大メーカーに製造部品やサービスを供給する
納入業者用基本品質マネジメントシステムでしたが、
近年では自動車以外の業界でも適用され始めています。

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 ※ISO9001:1994をベースにBIG3が定める
  自動車業界特有の要求事項を付加しています。

◇自動車部品製造産業界におけるセクター規格(ISO/TS16949:2002)

  通称「TS2」とも呼ばれ、
  多くの自動車部品関連製造組織で
  採用されている品質マネジメントシステムです。
 
QS9000は、米国BIG3を直接顧客とする自動車部品や
材料・サービスの供給者に求められている
固有の要求事項の規格であるのに対して、
ヨーロッパでも自動車各社が
供給者に要求するために開発した自動車規格が
ドイツ規格、フランス規格、イタリア規格
それぞれに制定され運用されていましたが、
それらの規格を統合するための組織として
IATF(国際自動車タスクフォース)が結成され
1999年、ISO/TS16949を発行しました。

ISO9000シリーズの2000年改定に沿って
ISO/TS16949:2002が第二版として発行されました。
QS-9000は2006年で失効予定で、
自動車業界はこの規格に一本化される方向です。

   ※TSとは、Technical Specification のことです。

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◇食品安全マネジメントシステム規格(ISO22000)

ISO22000は、食品衛生管理で世界的に認められている
Codex委員会HACCPを軸としたISO規格です。
規格の構成はISO9001と酷似していますが、その中身は
HACCPの考え方を中心とした食品安全マネジメントシステムの
構築及び改善の内容となっています。

ISO22000は食品安全ハザードのリスク分析の手法を
HACCPから取り入れ、
マネジメントシステムの考え方を
ISO9001から取り入れています。

HACCP(ハサップ)とは、
Codex委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)
が作成した食品安全システム構築のための指針で、
1960年代に宇宙飛行士の食事の安全性を確保するために、
アメリカで開発された衛生管理の手法
です。

従来は最終段階の検査で安全性を確認してきましたが、
HACCPは農場から食卓に至るすべての段階で
予め危害を予測・分析して継続的に監視し、
その危害を最小限に抑えようとするものです。

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◇電気通信製品にかかわるマネジメントシステム規格(TL9000)

ISO9001:2000をベースに、
電器通信業界特有の要求事項を付加した規格です。

電気通信製品(ハードウェア、ソフトウェア及びサービス)の品質を
効果的かつ効率的に向上させる
システム要求事項が義務付けられている点と、
ISO9001等と異なり、組織のパフォーマンス測定と
報告が義務付けられている点が特徴です。

◇医療機器にかかわるマネジメントシステム規格(ISO13485)

医療機器の規制目的のためのシステムとも言われています。

医療機器は人命や健康維持に大きな影響を持っているため、
滅菌、リスクマネジメント活動、清浄・清潔・汚染防止といった
衛生面での厳格な医療機器特有の要求事項が
ISO9001:2000に追加されていて、
文書化の要求が多いのも特徴です。

◇情報セキュリティにかかわるマネジメントシステム規格(BS7799)

BSI(英国規格協会)が制定した国際的に認知されている
情報セキュリティマネジメントシステム規格で、
自治体、民間企業などの組織を問わず適用できます。
情報セキュリティ管理の仕組みについて規定した規格です。

◇情報セキュリティにかかわるマネジメントシステム規格(ISMS)

BS7799-1は情報セキュリティ管理実施基準で、
ISO/IEC17799として発行されましたが、
BS7799-2は、情報セキュリティ管理システム仕様で、
日本でもISMS(Information Security Management System)
適合性評価制度として発行されています。

ISO/IEC15408と並んで現在最もポピュラーなセキュリティの規格です。

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Photo by (c)Tomo.Yun

◇労働安全衛生マネジメントシステム規格(OHSAS)

職場における労働衛生災害リスクの低減と、
将来の発生リスクを回避するため、
継続的にマネジメントシステムを
改善し続けることを求めた規格です。

OHSAS(オーサス)に関する代表的な規格に、
英国規格協会BSIがBS8800を基本に
1999年に発行したOHSAS18001があります。

ISO9001(JIS Q 9001)、ISO14001(JIS Q 14001)と
共通のマネジメントシステムが採用されていることから、
品質・環境と合わせて同時に取組む組織が増えています

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第三者の認証登録を受けると、
市場参入の機会が増大したり、コスト削減に繋がったり
従業員の士気向上、経営の透明性が増すので
ステークホルダーからの評価が向上します。

しかし…マネジメントシステムが認証されたことで
市場での競争において優位に立てた、
という企業がどれくらいあるでしょう。

既に現在、ISO9001認証取得は常識化しています。
けれどQMS(品質マネジメントシステム)を導入して、
経営的に成果が得られていると言えるでしょうか。

規格の要求は効率やパフォーマンスを要求していませんし、
要求事項や審査機関が
具体的な改善策を提示してくれるわけでもありません。

マネジメントシステム規格を、
持続的革新と強い経営体質実現への
マネジメントツールとして有効に利用することが
企業の繁栄、ひいてはステークホルダーの利益、
快適な暮らしにも繋がるのです。

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ISO9001とは

ISO9001とは、企業が品質やサービスに関しての方針を定め、
顧客の満足度を 継続的に改善していくための仕組み、
マネジメントシステムを改善し続けること(PDCA)を求めた、

品質マネジメントシステム規格(QMS)のことです。

正式名は「ISO9001:2000」、
日本語版は「JIS Q 9001:2000」となっています。

2000年版改訂で業種を問わない経営一般のマネジメント規格となり、
認証取得は、サービス、小売業等、業界を問わず広がっています。

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以下はISO9001ファミリー規格の主なものです。

・ISO9000:2000…ISOの基本理念と用語の定義が載っています。
ISO9001:2000…これがいわゆる「品質マネジメントシステム規格」。
品質管理の仕組みについて定めた国際規格で、
審査の基準として使われます。
この基準に合っていることを第三者に証明してもらう
ことが、ISO9001の認証(登録)ということになります。

・ISO9004:2000… パフォーマンス改善の指針です。
要求事項でも認証対象でもなく、
QMSを導入して経営改善をしていく際の
システムの効率を向上させるための指針となるものです。
・ISO19011:2000…品質及び環境の審査(監査)の方法の規格です。
審査機関の審査は、これに従って行われます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

ーーーISO9001が生まれた背景ーーー

第二次世界大戦後、欧州に駐屯していたNATO
(北大西洋条約機構)
軍は調達する物資の
品質問題に苦慮していました。

母国の規格管理団体に対して、
対策を取ってくれるよう依頼したことが、
ISO9000シリーズ規格を生むきっかけになったと
言われています。

アメリカでは1979年に品質システム規格、
ANSI/ASQCZI-15が制定され、

フランス、イギリス、カナダ等でも内容は似ていますが、
それぞれの国内規格が相次いで制定されました。

中でもイギリスの規格管理団体BSI(英国規格協会)
1979年に発行したBS5750規格は、
ISO9000シリーズ規格の誕生に
大きく影響を与えたと言われています。

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Photo by (c)Tomo.Yun

アメリカのANSI/ASQC ZI-15規格が
ガイドライン規格であったのに対し、

BS5750規格は多水準の要求事項を含んでいるのが
大きな特徴でした。

両規格とも、
購入者からの要求をベースにしていたという事が、

後に制定されるISO9000シリーズ規格の
性格を決めることになりました。

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Photo by esupply

1970年代にはNATO軍購買部門の要求に加えて、
原子力開発の高まりに見られるように、
複雑な製品の品質管理が
重要視されるようになってきました。

製品品質重視の風潮は、
各国の品質システム規格を
統合しようとする動きを加速させ、
欧州統一経済ブロックの構想も、
品質システム規格統合の後押しをしました。

また各国に異なる品質システム規格が存在することは、
国際的な通称活動を阻害することにも繋がることから、
これらの規格を統合して国際規格を作る動きとなりました。

その結果、1976年にISO(国際標準化機構)に
「品質保証の分野における標準化」を活動範囲とする
技術委員会
TC(テクニカルコミティー)176が設置されました。

TC176には2つのSC(sub-committee)が設けられ、
SC1で用語、SC2で品質システム
が検討されることになりました。

その結果1984年、ISO8402が用語の規格として、
1987年、ISO9000〜9004の5種類が
品質保証規格として発行されます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

TC176のメンバー国は、発足当時主要メンバーは21ヶ国、
オブザーバーメンバーは14カ国であったのに、
年を追う毎に増加していき、
1989年にはそれぞれが33ヶ国と26ヶ国になり、
各国の関心の深さを窺い知ることができます。

なお、このISO9000シリーズ黎明期において、
TC176では第三者の認証には用いないものとしていました。
TC176は規格を制定する委員会であって、
ここで作成された規格をどのように使うかについては、
直接関与しないという立場をとっていたのです。

しかし、ISO9000シリーズ規格がいつの間にか
認証の基準規格として
国際的に使用されるようになった背景には

欧州統一の影響が大きいと思われます。

欧州統一は、戦後の欧州の悲願でした。
よって1960年代からECの協議は数を重ねていきます。

※EEC、EUと呼称が変わっていきます。

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Photo by esupply

そうした欧州の動きもあって
1987年にISO9001シリーズ規格が制定されます。
このうちISO9001〜9003は要求事項です。

この時既に「品質マネジメント」という言葉が使われていました。

つまり、製品その物の規格を規定するのではなく、
製品を作る過程から引渡しまでのプロセスの仕組みを規定し、

製品の品質保証に加えて
顧客満足の向上を図ろうと目指すものでした。

1994年の改定(第二版)は小幅なものにとどまり、
2000年の第三版改定で
ISO9000ファミリーとして発行され現在に至っています。

  ※「ISO9000シリーズ」は2000年版からは
   ISO2000ファミリーと呼び方が変更されました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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1SO14001とは

1SO14001とは、
企業や組織の活動、製品・サービスが直接又は間接的に
環境に与える影響を低減し、
環境への悪影響を与える事故の発生を予防するため、継続的に
マネジメントシステムを改善し続けることを求めた規格、

環境マネジメントシステム規格(EMS)のことです。

1992年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた
地球サミット(環境と開発に関する国連会議)で、
地球環境問題が議論され、

人類の子孫に豊かで明るい地球環境を伝えていく
願いを込めた行動計画、「アジェンダ21」が採択されました。

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Photo by フリー写真素材集

アジェンダとは「課題」のことで、「アジェンダ21」で
「21世紀への課題」という意味になります。

この地球万民の想いが集約されたアジェンダ21を
しっかりと受け継ぐ目的で1996年に制定されたのが、
ISO(国際標準化機構)が定めるISO14000s(シリーズ)、
環境マネジメントシステム規格です。

  日本でも、同年10月にJIS規格として
  「JIS Q 14001」等が発行されています。

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Photo by かもめ工房

ISO14000シリーズは、環境マネジメントシステム、
環境監査、エコラベル、環境パフォーマンス評価、
ライフサイクルアセスメント等
で構成されています。

全てのマネジメントシステム規格でPDCAサイクル
継続的活用が求められていますが、
EMSにおいては特に重要事項です。

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Photo by かもめ工房

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2006年07月10日

上場株・店頭株・未公開株

株式にはいろいろな種類があります。
これも少し見ておきましょう。

まず株式の取引形態によって
上場株、店頭株未公開株に分類されます。

上場株とは、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、ジャスダック、
以上6つの証券取引所に上場されている株式のことです。

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店頭株とはジャスダック市場(旧店頭市場)
株式を公開(登録)している株式のことです。
登録銘柄と流動性不足などの理由で登録廃止になった
店頭管理銘柄があります。

未公開株とは上記以外の株式のことです。
未上場株ともいいます。
普通は売買できませんが
グリーンシート銘柄については売買できます。

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普通株・優先株・劣後株(後配株)

株主の権利によっても分類することができます。

※株主平等の原則からすると本来こういう分類は
おかしいのですが、商法ではこの例外として、
会社が株式の内容と発行予定数を定款に定めた場合、
権利の内容が異なる株式の発行を認めています。

普通株とは最も一般的な株式のことです。
単に株式といえば普通株のことを指し、
他の株式と区別するために普通株と呼ばれています。

優先株と違い議決権があります。

優先株とは特殊株の一種で、普通株に比べて優先的に
配当金や残余財産の分配を受ける権利があります。
但しその反面
議決権や新株引受権が与えられていないのが普通です。

※これを無議決権株式といい、以前は優先株だけの物でしたが
2002年の商法改正で、種類株の1つとして
発行できるようになりました。

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また優先株は配当率が固定されていて、
配当を受け取れる確実性は増しますが、
企業の経営が好調で儲かっている時でも
高配当は受け取れません。

優先株は普通株に比べてコストがかかりますが、
投資家に有利な条件を出すことで資金を調達しやすく、
銀行のように自己資本比率に神経を使う企業にとっては、
その比率を向上できる大変助かる株式です。

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Photo by (c)Tomo.Yun

優先株の多くは普通株へ転換できる転換権が付いています。
これを転換予約権付株式と呼びます。
これまでは転換株式と呼んでいましたが、これも
2002年の商法改正で、名前が変更されました。

※1998〜99年にかけて、銀行の優先株を
政府が購入するという形で公的資金が投入されましたが、
この時に付けた普通株へ転換する権利を行使しないままでは
政府が責任を問われることになります。

※三菱UFJとみずほ両フィナンシャルグループ、
三井住友も1年前倒しして2006年度中に、
公的資金完済の計画を立てています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

後配株(劣後株)とは、優先株と反対に
普通株より後に配当金や残余財産の分配を受ける、
投資家にとっては不利な株式のことです。

普通、会社に利益が上がっていない場合
株式を発行して増資すると、一株当りの価値が下がり
既存の株主の配当も下がる恐れがあります。
普通株主の利益を損なわずに、資金調達する方法として
考えられました。

このような性格上劣後株は、主に経営者や発起人に対して、
また政府が特殊法人や公共事業会社等の株式を
取得する際に利用されています。

 ※また相続税対策として、
 優先株や劣後株が利用されることもあります。

会社のオーナー社長が長男に事業を引き継がせたい時、
長男には議決権はあるけれど配当が少ない劣後株を譲り、
自身は配当は多いけれど議決権のない優先株(無議決権株式)
を所持すれば、

会社の乗っ取りや経営権を巡った争いを未然に防ぎつつ、
贈与税・相続税対策もスマートに乗り切れる
大変優れた手段といえるでしょう。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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単元株とは

一方株の取引単位としては単元株(旧単位株)
というのが株式を売買する際の最小単位となります。
議決権の行使が出来るための最低株式数でもあります。

単元株(最低取引単位)は銘柄ごとに決められていて、
発行企業が自由に設定できます。

単元株制度(旧単位株制度)
2001年の商法改正で導入された
株式売買を単元株の整数倍で行う制度です。
1単元の株式数の上限は1000株で
株式総数の200分の1を超えることはできません。

売買単位の引き下げを目的として導入されましたが、
1000株単位と100株単位が主流になっています。

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Photo by (c)Tomo.Yun

上場企業にはすべて単元株制が義務づけられています。
証券取引所でも1単元の株数で取引されており
それにより発行会社の事務負担の軽減や、
1株株主による株主総会の議事妨害行為等を
排除することができるのです。

また株式の金額表示には額面株式と無額面株式の
2種類がありましたが、これも2001年の商法改正で
無額面株式に統一されました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

株式の時価が額面からあまりにもかけ離れていて
額面を記載する意味を持たなくなったのと、
株式の分割がしやすいという利点があります。

 ※株価が高くなり過ぎた場合に、株式を分割して
 株価を下げ流通性を高める手法です。


銘柄ごとの単元株については、会社四季報や
日経新聞の株価欄に記載されています。

  企業情報の単元株数の欄に無記入の会社は
  1株から売買可能ですが、この場合大抵
  1株の値段が高額です。。。

小額で株式を始めたいというのなら、
ミニ株(株式ミニ投資)
るいとう(株式累積投資)というのがあります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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次のページ  :ミニ株(株式ミニ投資)とは>

ミニ株(株式ミニ投資)とは

ミニ株とは単元株(最低取引単位)の10分の1の株数から
売買できるシステムのことで、

正式には株式ミニ投資といいます。

小額の資金で投資が可能となり、
初心者にも入りやすいかもしれませんが
証券会社が購入した単元株を投資家に売っているので、
株の名義は証券会社にあり、
株主総会での議決権などはありません。
正式な株主ではないので、株主優待も受けられません。

ただし、株式分割や配当金は受け取れます。

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Photo by フリー写真素材集

そしてミニ株を行う際に注意しておかなければならないのは、
指値注文ができないということです。成行でしか買えません。
注文を出した日の翌日の寄付きで買うので、
買いたい値段を指定することはできません。

 ※寄付きとはその日の市場で最初に売買が成立した時の値段。
   寄付き値、始値、ともいいます。

また、売買単位が1株のものは
それ以上分割できないのでミニ株対象外です。

Yahoo!、NTT、NTTDocomo、日本テレコム、JR、JT、DDI等

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Photo by esupply

他にもほふり”(証券保管振替制度)に同意していない株式も
売買できません。

ほふり(保振制度)とは1991年(平成3年)に導入された制度で、
株式会社・証券保管振替機構に、
参加者である証券会社や銀行等が
投資家から預かっている株式等の有価証券を集中預託し、
口座振替(帳簿上の記帳の変更)により
権利の移転を行う制度をいいます。

株式の名義上は保振機構ですが、
株主は実質株主として登録され、
株主としての権利(株主総会への出席、株式分割、
配当金、株主優待等)を得ることができます。
名義書換をすることなく、いつでも売却が可能で、
実質株主制度とも呼ばれています。

 2009年(平成21年)に予定されている、株券不発行制度
 (株券の電子化)にも対応しています。
 *上場会社等の公開会社の株式については、平成21年6月
 までに一律ペーパーレス化されることになりました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

取引できる証券会社が限られていたり、
手数料が単元株とほとんど変わらない、
売買単位を引き下げる企業も増えてきた等、
ミニ株のメリットは徐々に薄れつつあるものの、

小額投資でリスクが少ないのですから、
いろいろな銘柄のミニ株を少しずつ買い進め、(リスク分散)
いずれ単元株に!という長期投資は、
本来の株式投資の姿と言えるかもしれません。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

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プチ株(単元未満株取引)とは

ミニ株よりもさらに小額投資できるのが
2004年からカブドットコム証券で取り扱われている
新サービスプチ株別名「単元未満株取引」です。

ミニ株は1単元の10分の1からでしたが、プチ株は
なんと1株から売買
できるのです。
究極の小額株式取引とも言われる所以ですね。

ミニ株と違って、株の名義も投資家のものになるので
”プチ”株主気分を味わえます。
(o^−^)o

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Photo by (c)Tomo.Yun

 !ただし、ミニ株同様1単元が1株の銘柄は
  売買できません。

正規の株主として発行会社に登録されるので
特定口座での管理が可能となり、ほふり(証券保管振替機構)
を通して他社からの株式の移管もできます。

単元株と同じく株主権があり、配当金の配分や
株式分割の割当も株数に応じて配分されますが、
議決権はありません。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

プチ株もミニ株も、成行注文しかできないのですが、
プチ株は翌日の前場の寄付き、当日の後場の寄り付きと、
1日に2度取引をすることができ、いわゆる日計り取引
可能になります。

※日計り取引とは、購入した株式をその日のうちに売却する取引
  日計り取引といいます。

株式分割等で単元未満となった端株を所有している場合、
これをプチ株で売却したり、不足分をプチ株で買い足し
単元株とすることもできます。

単元株になれば、買付直後に
通常の取引所取引が可能になります。

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Photo by かもめ工房

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次のページ  :ポケット株・ポケ株とは>

ポケット株・ポケ株とは

ポケット株はゴールドマンサックス
インターナショナルが発行する、
カバードワラントという有価証券です。

株そのものを買うのではなく株を売買する権利を売り買いし、
実際の株主はゴールドマンサックスになります。

ミニ株(株式ミニ投資) での売買ができない一株単位の銘柄や
多くの投資金額が必要な値がさ株などが少額で取引できます。

ただしデメリットとして、ミニ株(株式ミニ投資)と違って
満期があるので、期限までに値上がりしないと
価値は0になってしまいます。

でも、ミニ株(株式ミニ投資)やプチ株と異なり、
リアルタイムでの売買が出来るのは最大の特色であり
大きなメリットといえるでしょう。

もちろん、指値注文もできます。

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Photo by かもめ工房

ポケット株は満期日までの期間が長く、
カバードワラントのように値動きも激しくなく、
ほぼ原商品(元になっている個別株)の動きに連動します。

 短期投資で大きく儲けたいという人には、
 ハイリスクハイリターンのeワラントが
 向いているかもしれません。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

  ※値がさ株とは上場株式のうちで、
  株価水準の高い銘柄のことです。
  株価水準が低い株を低位株、
  中くらいの水準の株を中位株と言います。

※低位株は小額でも購入でき、株価が低い分損失も限られ
上昇率も高く見込めるなどのメリットがありますが、
その分倒産のリスクを抱えているかも知れない、
という注意が必要です。

 ※カバードワラントとは、株式や株価指数の買う権利
 (コールオプション)や売る権利(プットオプション)
 を証券化した商品<で、
 値付け証券会社が発行する外国証券です。

満期日に権利行使価格で株式を購入する権利を
売買するという、デリバティブ商品でもあります。

 ※ワラントとは、発行会社の株式を買い付ける権利のことで、
   新株引受権と呼んでいます。

※デリバティブというのは、派生商品とか金融派生商品等と
訳されていますが、
これは既存の金融商品(株式、債権、為替、
ローン、預貯金)から派生してできた取引の総称です。

将来の時点で売買をする予約取引のことで、先物取引
(ヒューチャー)、スワップ取引、オプション取引の総称です。

オプションとは特定の日に特定の売買を行う権利のことです。
 買う権利をコールオプション売る権利をプットオプション
 と言います。

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次のページ  :るいとう(株式累積投資)とは>

るいとう(株式累積投資)とは

るいとうとは、指定した銘柄を毎月1万円から
千円単位で購入し、積み立てる仕組みです。
正式には株式累積投資といいます。

配当は自動的に再投資される仕組みで、持株数が
単元株に達すれば、名義書換により株主としての
権利を行使することができます。

株主総会に出たり、株主優待が受けられるのです。

毎月一定金額で同じ銘柄を購入する投資方法を、
ドルコスト平均法といいます。

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  ドルコスト平均法とは…
  ”債券や株式の価格は常に変動するもの”という事を
  利用したもので、定期的に定額を特定の商品に投資すると、
  価格が高い時には少ない口数を、価格が安い時には
  多くの口数を購入することになり投資コストは安定します。
  結果、平均購入代金を低く抑えられるというものです。

一度に全ての投資を行うのではないので、、
時間の分散ができ、リスクの軽減が可能です。       

※確定拠出型年金では、定期的に拠出される掛金で
同じ商品を毎月一定金額ずつ購入することによって、
時間の分散とドルコスト平均法を
確実に実行することができます。
                              
株式るいとうは1口座につき10銘柄ま購入できます。
一銘柄1万円から千円単位で好きな金額を指定し
積み立てていくので、長期投資に向いているといえます。

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証券取引所に上場されているほとんどの銘柄が取引可能ですが、
野村証券、大和証券、日興コーディアル証券など、
取り扱われている証券会社は限られています。

売却はいつでも時価で出来、一部売却も可能です。
代金受け渡しは4営業日目になります。

 ※るいとうには「ファンドるいとう」というのもあります。
 購入するのが株式ではなく、 ファンド(投資信託)になります。

投資信託は、たくさんの人から集めた資金を元に、
運用のプロのファンドマネージャーが、株式や債券などに
幅広く投資して運用するので、(分散投資)
株式るいとうよりもさらにリスク分散を図ることができます。

こちらも長期投資に向いているといえます。

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Photo by かもめ工房

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次のページ  :トラッキングストックとは>

トラッキングストックとは

今まで株式の取引形態や株主の権利から等、
いろいろな観点から株式の種類を見てきましたが、
最も大きく分けると、普通株と種類株に分類できるかもしれません。

トラッキングストックとは、子会社連動配当株のことで、
種類株の一種なのです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

複数の事業を展開している企業が
その支配関係を維持しつつ、
特定の事業部門(セグメント)や子会社の業績に、
その株価や配当が連動(リンク)するように
意図して発行される株式のことです。

発行者がその連結子会社の業績に応じて、
株主に利益配当を支払うことを内容とする
種類株(クラスストック)と定義されています。

株式を発行するのは親会社で、
株価には特定事業部門または子会社の業績のみが反映されます。

発祥はGM社がロス・ペロー氏から情報処理サービスの
エレクトリック・データ・システムズ(EDS社)を買収し、
1984年にEDSの業績に連動したGME株式を発行したことによります。

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日本では平成12年にソニーが100%子会社である
ソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)を対象に
「日本版トラッキングストック」を発行すると発表し、

東京証券取引所ではこれに伴い平成13年に規則改正をし、
「子会社連動配当株」として上場が認められることになりました。

トラッキングストックの発行は、成長性のある事業部門や
子会社の価値を鮮明にアピールし、
その事業価値を株式市場で顕在化させることは、

グループ企業にとっても絶好のIRになります。

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この株式が導入される以前は、業績のいい
将来性のある部門を集中して育てていくには、
本社と切り離して子会社化し、株式を公開して
自己資本を調達する以外に方法はありませんでした。

この方法では、外部株主が発生することになり、
親会社の子会社に対する経営支配権も弱まります。

事業の支配権を外部に渡したくない親会社は、
せっかく高収益・高成長が見込める事業でも子会社化せず、
結果、コングロマリット・ディスカウント状態が
発生することになり、
自己資本調達の妨げになっていました。

 ※コングロマリット・ディスカウントとは、
 複数の事業からなる企業の株式時価総額が、
 個々の事業部門(セグメント)の価値の合計を
 下回る現象をいいます。

トラッキングストックは、
親会社が対象事業を担保に資金調達するので、
そこで得た資金は親会社に入り、しかも子会社等の株式を
第三者に公開(公募)するものではないので、
経営支配権を希薄化せずに維持でき、
なおかつ企業の得意分野を鮮明にアピールし、
連結経営を強化していける(シナジー効果)絶好の手段として、

発行会社にとっては打ち出の小槌のような手法といえます。

問題は投資家にとってデメリットがあるということです。

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対象事業の株主は親会社であり議決権も当然親会社です。

コーポレートガバナンス
株主重視の考え方が根付いていない日本では、
親会社の都合のいいようにトラッキングストックが
発行される恐れがあり、
その動向には注意が必要です。

親会社の経営状態が悪くなった時に、
子会社として株式を公開している所であれば
株主利益が守られ、資産が流用されるには
相当の障害は避けて通れません。

けれどトラッキングストックにはそれがありません。

普通株価とトラッキングストック株価の
二種類が存在するなど、
その仕組みが一般投資家に今一つ理解し難いのも問題です。

今後更なる制度の改善や、
権利・義務関係の明確化が求められます。

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次のページ  :バリュー株・グロース株とは>

バリュー株・グロース株とは

株式の投資スタイルという観点から見ると、
バリュー株(割安株)グロース株(成長株)に分類できます。

バリュー株とは、その企業の適正価格よりも時価が低い株式で、
バリュー投資とは、過去から現在までの株価の動きなどから、
現在の株価が割安だと判断した時に購入する投資方法です。

貸借対照表損益計算書などの有価証券報告書から、
過去数年の企業の業績や財務内容を分析・判断して
投資する方法を、ファンダメンタル投資というのに対し
ローソク足ヒゲ、十字線、移動平均線といった
チャートを利用する投資のことをテクニカル投資といいます。

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 ※チャートとは、株価の動きをグラフで表したもので
  ケイ線ともいいます。
  チャートやローソク足については別な項目で説明します。

割安株・割高株の分類によく用いられる基準に、PER
(ピーイーアール、Price Earning Ratio)
というのがあります。

PERとは、株価収益率ともいい、
現在の株価が一株当りの利益(EPS、イーピーエス
Earnings Per Share)の何倍になっているかを
表す指標で、この数値が低い方が割安になります。

PERは企業の時価が、利益面から見て割高か割安かを
判断するものですが、
企業が保有している、資産の面から株価を判断する指標
PBR(ピービーアール、株価純資産倍率
Price Book value Ratio )、
キャッシュフロー(現金の流出入)に焦点をあてた指標に
PCFR(ピーシーエフアール、株価キャッシュフロー倍率
Price cash flow ratio)があります。

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Photo by (c)Tomo.Yun
 
一方グロース株とは、現在の株価が既に高くても(根がさ株)
成長性が見込める株式のことですが、
単純に成長している企業の株式とも捉えられています。

グロース投資で気をつけないといけないのは、
将来の企業業績を予測して、現在の株価が
割高か割安かの判断をしないといけないことです。

二つの大きな違いは実績があるかないか、という点になります。

割安株が好調な年は成長株が低迷しているといったように、
概ね対称的な動きをすることが多いので、
資金に余裕がある人は、両方のスタイルを組み合わせて
リスクを分散させると良いでしょう。

景気下降局面では成長株、上昇局面では割安株といわれますが、
景気の動向に合わせて、その時々でベストと思われる投資に
乗り換える投資方法を、スタイルローテンションといいます。

スタイルローテンションは、個々の企業の業績や個別銘柄の
動きにはあまり関心がなく、言ってしまえば
市場のモメンタムを押さえに行くことにあります。

  ※モメンタムとは、勢い、はずみ、方向性という意味で
  相場の値動きの勢いを見るためのテクニカル指標です。

また、景気の局面に応じてセクター(業種)の買い時、
売り時を判断する手法は、

セクターローテンションと呼ばれています。

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2006年07月09日

PER(ピーイーアール)とは

PERとは、「Price Earings Ratio」の略語で、
株価収益率と訳されています。

株価が1株当り利益の何倍になっているかを表しています。

1株当り利益の何倍で株価がついているかということは、
「その会社の利益の何年分の価値で取引されているか」
ということになります。

※1株当りの利益は純利益を発行済株式数で割って出します。

1株あたりの利益(EPS)= 純利益 ÷ 発行済株式数

※EPSとは、Earnings Per Share の略で
 1株当り利益のことです。

PERは株価を1株当りの利益で割って求めます。

PER(株価収益率)= 株価 ÷ 1株当りの利益

 PERを使うことによって、利益面から見て
 現在の株価が割安か割高かを判断します。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

PERは、1株当り利益に対して割安か割高かを
判断しますから
企業の大きさに関係なく比べることができます。

株価の水準を評価する時にはいろいろな尺度がありますが、
PERは、株式を売買する際には
必ずチェックした方がいいでしょう。

代表的な指標ですから、
四季報やオンライントレードの株価情報の欄にも載っています。

PERは相対的に見るものなので、
これくらいの数値がいい、というのはありません。

同業他社のPERと比較したり、
その会社の過去のPERと比べて、
割安とか割高を判断します。

ただしこの指標は、
企業の状態までは教えてくれません。

同業他社と比べて低PERであっても、
業績が下降中であれば、
株式を購入しても損をするだけです。
決して割安な株とはいえません。

その企業がどういう状態であるかを見るには、
貸借対照表(バランスシート)などの
財務諸表を見る必要があります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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PBR(ピービーアール)とは

PBRとは、「Price Book Value Ratio」の略語で
株価純資産倍率のことです。

株価が1株当り純資産(株主資本)の何倍かを
表した指標
です。

PERが利益から見た指標であるのに対して、
PBRは会社が所有する現在の資産に対して、
株価が割安なのか割高なのかを判断する指標です。

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Photo by カメラコゾウ

ここで株主資本のおさらいをしておきましょう。

企業が事業を行う際に、
株式を発行して調達した資金が自己資本でしたね。
返す必要のないお金です。
別名株主資本ともいいます。

それに対して、銀行から借り入れたり社債を発行して
調達した資金のことを他人資本(借入金)といい、
利息などの金利負担も発生しますし、
将来返さなければいけないお金です。

貸借対照表では負債として、
自己資本(株主資本)と共に、右側に表記されます。

負債自己資本を合わせたものが資産(総資本)です。

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資産
負債
資本

さてここでPBRに戻って…
今仮に会社が解散したと想定してみましょう。

株式というのはその会社の一部ですから、
会社が解散した時などには
その会社の土地や建物を売った代金を、
株数に応じて受け取ることができます。

負債をすべて返済した残りが、
株主に分配されるお金で株主資本(自己資本)
ということになります。

この株主資本のことを純資産ともいいます。
借入金を除いた会社の資本金、法定準備金、剰余金の合計です。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

まずこれを発行済株式数で割って、
1株当り純資産(株主資本=自己資本)を出します。

1株当り純資産(株主資本、BPS)= 純資産 ÷ 発行済株式数

この1株当り純資産のことを解散価値と言ったりもします。

解散価値とは、会社が解散した場合に資産を売却し、
株主に戻ってくる1株当りの金額で、
資産総額から借入金などの負債総額を差し引いた
純資産を発行済株式数で割った金額です。

この解散価値に比べて、株価がどこまで
買われているかを見ることによって
割安・割高の判断をします。

PBRは、株価を1株当り純資産で割って求めます。

PBR(株価純資産倍率)= 株価 ÷ 1株当り純資産

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Photo by(C)SozaiRoom.com

ところでこのPBRは、PBR=1というのが
評価基準になります。

PBRが1ということは、1株当りの会社の資産と
株価が同じであるということですから、
優良株であれば1倍を下回ることはまずありません。
よって株価の底値を判断する際によく使われる指標です。

ただし、この場合の会社の資産(純資産)は、
時価ではなく”帳簿上の価値”であるという所に注意が必要です。

PBRが1倍を割ったから、株を買うだけで儲かる!
と思って購入すると、
その会社の不動産は購入した時点の金額で計算されていて、
現在の不動産価値はずっと低いということもあるからです。

 ※将来は時価会計へと移行していく模様です。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

他にもPBRが1倍に近い、あるいは1倍を割っているということは、
これ以上下がるリスクが小さいから安全だ、ではなく、
PBRが1倍を割リ込むほど株式が売られた理由が
何かあるかもしれません。

特に悪い噂もなく財務体質に問題もなければ
低PBRの企業の株は「買い」です。

ただし慢性的にPBRが低い会社は要注意です。
たいていの場合、不良債権や不良資産、不良在庫を
抱えていたりして、財務内容に問題があります。

ここでも貸借対照表(バランスシート)
見ることが必要になってくるのです。

すぐに現金化できる資産はあるのか、
有利子負債はどれくらい存在するのか、
財務分析をしっかりと行うことが大切です。

※バリュー株(割安株)投資の際にもPBRは参考にしますが、
株価が低い分、倒産リスクは高いわけですから、
財務体質の見極めができないようであれば、
無闇に手を出さない方がいいでしょう。

 逆に言うと、有価証券報告書を読みこなし、
 ファンダメンタル投資法を一度身につけてしまえば、
 あとはゆっくりと構えて株式投資をすることができます。

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また、PBRが高い株はリスクが高いかというと、
一概にそうともいえません。

一般的に、成長性の高い企業は資産内容よりも
その事業内容で評価されますので、
PBRが高い企業が多くなります。

その会社の成長性を買っているのですね。
目立っている企業ともいえます。
新興市場で取引されている企業のPBRは
概ね高い傾向に
あります。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

その企業の将来性を買っているのですから、
ひとたび期待がはずれると、
大きく値を下げる可能性もあります。

いずれにせよ、一つの指標だけで株価を判断するのは
好ましくありません。

PERと同じくらいよく使われている
ファンダメンタルズ分析ですが、
他の指標も参考にし、財務分析を入念に行い、
市場の動向も見極めた上で、
株価を判断することが大切です。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

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ROE(アールオーイー)とは

ROEとは、「Return on Equity」の略で
株主資本利益率のことです。

株主から集めたお金(株主資本=自己資本)
どれだけ効率よく活用して利益を上げているかを見る指標です。

 当期利益を株主資本で割って求められます。

ROE(株主資本利益率)=(当期利益÷株主資本)x100

ここでいう当期利益とは、
仕入れや営業経費などの各種コスト、本業以外の損益、
設備投資や土地を購入した際に発生する特別損失、
そして税金を差し引いた後、
最後に会社に残る利益のことを指します。

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Photo by (c)Tomo.Yun

純利益、最終利益、税引き後利益など様々な呼称がありますが、
損益計算書での当期純利益になります。

当期純利益から役員賞与、株主への配当金を支払い、
最後に残った部分は未処分利益(内部留保金)として
今後の企業経営に活かしていくことになります。

貸借対照表(バランスシート、B/S)でいうと、
右側の資本の部(株主資本)に組み入れられます。

ROEは、株主から調達した資金と内部留保金を、
いかに効率よく運用し利益に結び付けているかを見る指標で、
この数値が高いほど対資本効率がいいということになります。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

ただ気を付けないといけないのは、
分母に株主資本がきているので
その会社の経営が借入金に負う割合が多くなった場合も、
ROEが高くなってしまうという点です。

借入金、つまり負債の部分が自己資本(株主資本)よりも
多い状態を債務超過といい、
大変危険な状態といえます。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

自分が投資しようとしている会社が健全な経営をしているか、
会社の財務体質の安全性を測る指標が
自己資本比率(株主資本比率)といって、
株式投資にとって非常に大切な指標ですので
押さえておきましょう。

自己資本を総資産で割って計算できます。

株主資本(自己資本)比率
    =株主資本÷総資産(負債+株主資本) X 100(%)

自己資本比率が高い方が安全なのですが、
無借金経営でも自己資本比率が100%になることはまずありません。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

商品の仕入れを頻繁に行う業種では、
商品を仕入れる度に現金取引していたのでは大変です。
こういう場合信用買い(掛買い)をするのが普通で、
掛で(信用で)仕入れたときに生じる債務を
買掛金(かいかけきん)といい、
これは借金ではない負債です。
こういう借金ではない負債が存在するのが通常の経済だからです。

一般的に50%を超えていると、
財務体質が安定していると言われていますが、
業種によって比率はまちまちです。
製造業などでは50%以上、
銀行や不動産業などは10%前後が普通だとされています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

またバランスシートの左側、資産の部では、
すぐに換金できる有価証券や現金などの流動資産
負債に比べてあまりにも少ないのも危険です。
資金繰りが悪化し、
場合によっては黒字倒産ということもありえるからです。

逆に土地や建物などの固定資産に比べて
流動資産が多すぎるのも感心しません。
企業活動の源泉である株主資本を
有効活用していないからです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

 ※決算短信に出てくる株主資本利益率(ROE)は、
 前期株主資本と今期株主資本の平均値
 当期純利益で割っているので注意が必要です。

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対資本効率のいい、つまり運用利回りのいい高ROEの株式は
やはり投資家にも注目されます。
株主重視の経営、高ROE実現を
経営の目標に掲げる企業が増えてきたのも
頷けるところです。

売上高重視、経常利益至上主義で通してきた日本型経営が、
株主重視の経営を目指すようになった背景については、

別な項目で検証していきましょう。

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Photo by ★Freepict(フリーピクト)

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PCFR(ピーシーエフアール)とは

PCFRとは、「Price cash flow ratio」の略で
株価キャッシュフロー倍率のことです。

 株価を一株当りキャッシュフローで割って求めます。

PCFR = 株価 ÷ 一株当りキャッシュフロー

   キャッシュフローとは、現金収支ともいって、
   現金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことです。
img9277.gif

いくら現金が入り(キャッシュイン)、
いくら現金が出て行ったか(キャッシュアウト)、
現金の流出入を示しているので、
損益計算書でいうところの当期純利益と違って
粉飾するのが難しいところから、

ファンダメンタル投資法であるバリュー株投資家からは、
PERPBRと並んで参考にされている指標です。

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Photo by (c)Tomo.Yun

そしてPCFRの値を求めるときに注目したいのが、
当期純利益に原価償却費を足し戻して計算しているという点です。

 ※原価償却費とは…
 土地を除いた建物や機械設備などの固定資産が、
 時間の経過により資産価値が下がっていく分、減価を
 費用
として計上し、新しいのと替える場合に備える
 会計上の手続きのことを減価償却といい、
 税制上、必要経費とみなされます。

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Photo by (C)PictureBox

企業が自社の発展のために
設備投資を行った際、
損失が出るのは建物や機械を購入した年だけですが、
実際には、その建物や機械を何年にもわたって使い
利益を出していくわけです。

利益を生むためにかかった費用を、
経費として認めているというわけですね。

減価償却費は決算時には費用として計上されますが、
現金の支出を伴わない費用ですので、
(資金収支計算書上の支出にはなります。)
実際には計上された減価償却費の額だけ
企業内部に資金が留保されることになります。

またどんな固定資産も、
減価償却により価値がゼロになるのではなく、
一定の価値が残るものとされています。
これを残存価格といい、
会計上、取得価格の10%とされています。

スクラップ価格、下取価格と同意語です。

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Photo by かもめ工房

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次のページ  :EV/EBITDA倍率とは>

EV/EBITDA倍率とは

EV/EBITDAとは、Enterprise Value/
Earnings before Interest, Taxes, Depreciation,
and Amortization の略で、
イービットディーエーとかイービットダーと読みます。

EV(企業価値)
EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・
無形固定資産の減価償却前利益)
の何倍かという指標
です。
それぞれ以下のように表されます。

EV=株式時価総額+有利子負債−現預金

EBITDA=営業利益+減価償却費

※本によっては
EBITDA=経常利益+支払利息−受取利息+減価償却費
としているところもあります。

アモーチゼーション(Amortization)とは、
無形固定資産の取得原価などを一定の耐用年数にわたって、
各会計期間の費用として配分することです。

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Photo by esupply

企業を買収する際には
発行済株式すべてを購入しただけでは収まりません。
企業には借金もありますから有利子負債を足して、
現預金など余剰資金を差し引いた金額で
企業を買収することができます。

それを「企業価値=EV」と見ているのですね。

EV/EBITDA倍率は、その企業を買収して
何年で元が取れるかの指標として有名です。

1980年代に当時の米タイムワーナーなど
メディア企業が使い始めたのが起源とされています。

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Photo by LinkStyle

90年代後半からIT企業を買収する際の目安として、
米国の投資銀行などが使うようになって急速に広まりましたが、

金利、税金、減価償却費を引く前の利益を元にした数値ですので、
企業の設備投資競争は次第に過熱し、
2002年に破綻した米通信大手ワールドコム
粉飾決算問題が露呈してからは、
EBITDA指標に対する関心も
急速に衰えました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

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次のページ  :株価は経済を映す鏡>

株価は経済を映す鏡

株価は経済を映す鏡である、
とはよく言われることです。
そしてその株価を見る環境も、
時代と共に変化を続けている
のです。

日本は長い間、売上高を目標に突き進んできました。
これは分かりやすいです。
売り上げが上がれば会社も儲かり社員の給料もアップし、
もちろん多く売れば売るほど、市場でのシェアも獲得できます。

ところが、右肩上がりの成長を続けていた時代が終わると、
市場にはモノが溢れかえり、
賢くなった消費者は、
以前のようにモノを買わなくなりました。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

1990年代に入りバブルがはじけ、明るみになってきたのが
日本の会計制度です。

日本は経常利益を、企業経営判断の基準にしてきました。

経常利益とは、売上(粗利)から売上原価と営業経費を引き、
本業以外の損益を差し引いたもの
です。

バブル期には、多くの企業が必要以上に土地を購入し、
株式やゴルフ会員権など有価証券の売買も盛んに行っていました。

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経常利益とはそうした本業以外、主に金融商品の取扱損益も
含まれている
のです。

バブルがはじける前は、本業の経営が思わしくなくても
財テクによって粉飾することができました。
本業で出た赤字も、財務諸表上隠すどころか
利益にすることさえできました。

しかしバブルの崩壊で、本業以外の収益が入ってこなくなり
途端に本業のずさんな経営状態が露になります。

経常利益からだけでは企業の実態が分からない、
という声が高まり、これはのちに、
株式公開企業に、キャッシュフロー計算書の作成が
義務づけられる動きへと繋がっていきます。(2003年3月期決算から)

これまで株式の持合を続けていた銀行も、
ここにきて態度を一変させます。
資金繰りに困る持合会社に、土地を担保に融資を続けてきた
銀行の貸し渋りが始まったのです。

会社に出来る事といえば、資産を売却して現金化することです。
当然株式も売りに出されました。

その株を積極的に購入したのが、
外国人機関投資家と言われる人達です。

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中でもカルフォルニア州公務員退職年金基金カルパースは、
1999年9月、自らの組織に企業社会責任に関する
グローバルサリバン原則の適用を決定し、
2001年3月には Global Proxy Voting Guidelines で初めて
「企業責任の原則」という章を立て、

「株式を保有している企業が、グローバルサリバン原則や
マックブリッジ原則で盛り込まれたものを含めることを期待する」

と表明し、コーポレートガバナンスに問題がある企業に対しては、
株主議決権を行使して経営改革を迫り、
「物言う株主」としてその活動を日本でも展開するようになると、
それまで株式の持合に支えられて、
大雑把な経営をしていた日本の経営者も、
株主重視の経営に切り替えざるを得なくなり、

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Photo by フリー写真素材集

ここにやっと、
株主から集めたお金(株主資本)を、
どれだけ効率よく運用し利益に結びつけることができるか、
対資本効率のいい経営を目指さなければいけない、
という姿勢が芽生えてきた
のです。

※グローバルサリバン原則とは、1999年、
レオン・H・サリバン牧師が国連で発表した、
普遍的人権に対する支持、平等な機会の促進、児童の搾取・
体罰の禁止、集会・結社の自由の尊重をはじめとする
人権・労働要素が盛り込まれた原則です。

※マックブリッジ原則とは、
カトリック協会への差別を行わない北アイルランドの事業にのみ
米国企業は投資できるとする原則です。

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Photo by (c)Tomo.Yun

この頃盛んに使われていた指標が、
ROE(株主資本利益率)ですね。

株主重視の経営=ROE重視の経営である、
と言われていた時期もありました。

が実際には、今までも見てきた通り、
一つの指標だけでは
その企業の正確な実態を把握することはできません。

様々な指標プラス貸借対照表損益計算書、
さらにはキャッシュフロー計算書など、
財務諸表と照らし合わせて
総合的に株価を読むことが重要です。

次のトピックでは、
ファンダメンタルズ分析の要、
財務諸表を見て行きましょう。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

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次のページ  :有価証券報告書とは>

有価証券報告書とは

財務諸表に行く前に、
有価証券報告書も押さえておきましょう。

有価証券とは株券や債券のことで、
有価証券を使って1億円以上の資金調達をする会社や、
株式を証券取引所などに上場や公開している会社が、
金融庁に提出を義務付けられている書類のことです。

事業年度ごとに営業内容や経理の状況が記載されています。

◇表紙
会社名や所在地など会社の概要が記載されています。

第一部 企業情報

◇ 企業の概況

1.主要な経営指標の推移には、最近5事業年度の経営成績、
  財政状態などを大まかに理解する為に、
  次のような項目が記載されています。

売上高、経常損益、当期純損益、純資産高、総資産高、資本金、
自己資本比率
営業活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフロー、
投資活動によるキャッシュフロー、従業員数等

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Photo by ★Freepict(フリーピクト)

2.企業の沿革には、企業の創業以来の沿革が記されています。

3.事業の内容には、この企業は何をしている会社なのかが
  分かりやすく説明してあります。

4.関係会社の状況には、子会社などが関連会社がある場合は、
  その関連の状況、議決権の所有割合なども含まれます。

5.従業員の状況では、従業員数、平均年齢、平均勤続年数、
  平均年間給与など詳しく記載されています。
  ここで従業員の平均勤続年数もチェックしてみるといいでしょう。

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Photo by フリー写真素材集

◇ 事業の概況

企業が一年間でどのくらいの業績を
どのセグメント(事業分野)で上げたのか、
各事業ごとのキャッシュフローの推移・状況など、
さまざまな切り口から売上を見ており、
企業の実態が分かりやすく理解できます。
  
対処すべき課題には、企業の今後の課題が記載してあって、
ここから、今後企業がどういう点に力を入れるのかが分かります。

経営上の重要な契約等があった場合もここに記載されますので、
投資家にとっては、要チェック項目です。

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Photo by かもめ工房

研究開発活動には、企業が行っている研究開発の内容
そこにかかる費用も記載されていますので、
会社が自社の将来にどれだけ真剣に取り組んでいるかを、
見ることができます。

◇ 設備の状況

企業が当期に行った設備投資に関しての項目が記載されていて、
どのような事業でどんな設備投資をしたかも載っていますし、
事業所があった場合、各事業所の設備の状況、
重要な設備の新設や改修、売却等の情報から、
企業がどういう分野に積極的に設備投資をしているのか、
また無駄な設備投資はないのかも、
第二部のセグメント(事業分野)ごとの業績・売上と
照らし合わせて
判断することができます。

◇ 提出会社の状況

株式の総枚数や発行済株式数、新株予約権等の状況、
発行済株式から見る資本金等の推移、
所有者別の状況、大株主の状況、議決権の状況、
ストックオプション制度の内容など
株式に関してのさまざまな状況について書かれています。

特に所有者別の状況では、地方公共団体や金融機関、証券会社、
その他法人、外国法人、個人など7種類に分類し、
それぞれの株主数、所有株式数、その割合が記載されていて、
この株主数の合計が少ない企業の株式は、
流動性が低いと考えられています。

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Photo by (c)Tomo.Yun

※西武鉄道の虚偽記載は、所有者別の状況に偽りがありました。

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Photo by (c)Tomo.Yun

また自己株式を取得するに当たっての決議の状況、
配当政策や株価の推移、役員の状況についても書かれています。
役員の役名・職名・氏名・生年月日・略歴・所有株式数
までも明記
されています。

◇ 経理の状況

連結財務諸表財務諸表等が記載されています。

T 連結財務諸表等

1.連結貸借対照表
2.連結損益計算書
3.連結剰余金計算書
4.連結キャッシュフロー計算書
5.連結附属明細表
6.その他

  ※「その他」の中の注記事項は、財務諸表と同じくらい
  重要性を持っています。

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Photo by (C)PictureBox

U 財務諸表等

1.貸借対照表
2.損益計算書
3.キャッシュフロー計算書
4.利益処分計算書(または損失処理計算書)
5.付属明細表
6.主な資産及び負債の内容
7.その他

◇ 提出会社の株式事務の概要

決算期がいつなのか、株主総会はいつなのかなど、
株式に関しての事務的なことが書かれています。

◇ 提出会社の参考情報

事業年度の開始日から有価証券報告書を提出するまでに、
どんな資料がいつどこに提出されたのかが書かれています。


他に、第二部 保証会社等の情報、に該当があれば記載し、
監査報告書も添付されています。

投資家にとって必要な情報は、
有価証券報告書にすべて載っている、

といってもいいでしょう。

ポイントを押さえる目を養いたいですね。

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Photo by 2000ピクセル以上のフリー写真素材集

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財務諸表とは

財務諸表とは、
金融庁に提出が義務付けられている有価証券報告書
第一部5項目目、経理の状況に記載されているもので、
以下の内容から成っています。

1.貸借対照表
2.損益計算書
3.キャッシュフロー計算書
4.利益処分計算書(または損失処理計算書)
5.付属明細表
6.主な資産及び負債の内容
7.その他

財務諸表は、決算日から3ヶ月以内に開催される
定時株主総会で承認を得て確定します。

有価証券報告書内に記載する他、
税務報告書に添付する際にも使います。

財務諸表のことを決算書と呼ぶこともあります。

よく「決算短信」という言葉も聞きますが、
決算短信とは、上場会社が正式な決算発表を行う前に
その会社の決算が固まり次第、
内容を開示することになっているものです。

決算書(財務諸表)の速報版みたいなもので、
予想も含まれた数値は必ずしも正確なものではありませんが、
決算内容のポイントが記載されていますので、
最も早く入手できる情報として
多くの投資家が利用
しています。

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Photo by(C)SozaiRoom.com

 ※正式な決算発表より1〜2ヶ月早く開示されます。

また、各事業年度および中間期の決算発表時の
決算短信とは別に、四半期情報(第一・第三四半期)
開示している企業もあります。

 決算というのは普通年4回あって、
 決算日をいつにするかは
 各企業が独自に決めていいことになっています。

ほとんどの会社は3月決算ですのでそれを例に取りますと、

第一四半期決算…4月1日〜6月30日
中間決算    …4月1日〜9月30日
第三四半期決算…4月1日〜12月31日
年間決算    …4月1日〜3月31日

上のようになっています。

さてやっと、
ファンダメンタルズ分析にかかせない財務諸表の
各中身について見て行きましょう。

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貸借対照表とは(資産の部)

貸借対照表とは、企業のある時点での
資産状況を示す財務諸表
のことです。

左右に分けられたうち左側資産の部(借方、debit)といい、
右側資本の部(貸方、credit)といいます。

資本の部は負債と資本に分けられ、
必ず、負債と資本の合計資産になります。

   資産  負債 + 資本

左右の合計は常に同じでなければならず、
貸借対照表がバランスシート(B/S)と言われる所以です。

まず資産の部から見て行きましょう。

株主から調達した株主資本や、社債の発行・銀行からの借入れ
といった他人資本をどういう風に運用しているか、
資本の運用形態がここで分かります。

いろいろな名称が並んでいますが、
売ればお金になるもの、と考えると分かりやすいかもしれません。
(ただし、繰越資産は換金不能です。)
現金の代わりを成すこれらの財産を総称して資産といいます。

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Photo by (c)Tomo.Yun

資産は、上から現金化されやすい順に並べてあります。

 ※資本の部の資本(株主資本)は一度資金を調達すると、
  剰余金の積み立てはありますが、
  それ以外はさほどこの金額が動くことはありません。
 
 それに対して、資産の部と資本の部の負債は、
 企業活動に伴う金銭及び債券類の出入りが頻繁なため、
 固定と流動という区分をするのが一般的です。

○資産

◇流動資産

1年以内に現金化される資産のこと、もしくは
現金に換えやすい資産のことです。

・現金や小切手…現金や、受取小切手など即時換金できる証券です。

・当座預金………利息がつかない決済用の預金です。

・普通預金………通常の預金です。いつでも引き出せます。

・受取手形………売上代金の回収として受け取った、
           他人振り出しの約束手形・為替手形です。

売掛金…………掛売り(信用取引)した売上代金の未回収分です。

・有価証券………売買のための短期所有の債券・株券のことです。
           ※市場価格のあるものに限ります。

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Photo by (c)Tomo.Yun

 以上が[当座資産計]

・商品………販売する事を目的として外部から買い入れた物品です。
証券会社では有価証券、
不動産業では土地・建物も商品になります。

・製品………販売する事を目的として自ら製造した物品です。

・半製品……製品の製造途中ですが、そのまま販売できるものをいいます。
例えばテレビを作る過程でのブラウン管、
製材から初めて木工製品を作る過程での板など、
そのまま販売できるので半製品です。

仕掛品(しかかりひん)…製品の製造途中でそのまま販売できない
                 未完成品のことです。

※仕掛品は業種によって呼ばれ方が異なっていて、建設業では
未成工事支出金として処理されます。科目は棚卸資産です。

・原材料……製品の製造を目的として外部から買入れたものをいいます。

・貯蔵品……文房具や事務消耗品、包装資材や燃料などです。

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Photo by (c)Tomo.Yun

 以上が[棚卸資産計]

    ☆棚卸資産で節税対策☆

 ※棚卸資産の評価の仕方には大きく分けて
 原価法(8種類)と低価法があり、
 自社の性質に合った方法を8つの中から一つ選び
 さらに低価法を採用すると、
 自社が選択した方法で算定された価格と
 時価のいずれか低い方を取得減価として評価できるので、
 税引き前当期利益が少なく算定され
 結果、節税することができます。

 棚卸資産の時価が把握できる場合は、
 低価法を取り入れた方がいいでしょう。

・短期貸付金…役員・社員・取引先などに短期で貸した金銭等です。 

・未収入金…商品・製品以外のもの(工場用地など)を売った際の
        未回収販売代金や、
        本業以外の取引からきた未回収金(債権)です。
        預金の利息もここに入ります。

・仮払金……出張旅費などの未精算金です。

・前払金……仕入の際に前払いした金銭をいいます。

・立替金……社員や取引先などが支払うべきものを
一時的に立て替えた金銭です。

前払費用…支払済ですが、次期以降の費用とされるべき費用
(前払利息など)や、未だ提供を受けていない
労働やサービスに対する支出です。
   
貸倒引当金…売掛金の未回収を見積もったものです。

 ※流動資産は現金が典型的なものですが、
 一年以内に分譲の予定がある不動産などもここに含まれます。

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Photo by esupply

    ☆ワンイヤールールの例外☆

ワンイヤールールとは別名1年基準ともいい、
貸借対照表の流動と固定区分を分ける基本ルールです。

1年以内に清算されるものを流動資産(流動負債)、
1年超のものを固定資産(固定負債)と分類しますが、
売掛金や棚卸資産の中には、1年以内に
現金化できないものが多々あります。

ここで正常営業循環基準といって、
正常な営業活動によって発生する売掛金や買掛金、
棚卸資産は、営業循環の途中にある資産・負債であるとして、
流動資産・流動負債に分類するという例外

認められているのです。

つまり、不良資産があっても売掛金になり、
滞留在庫があっても棚卸資産として
計上されることになり、
この辺りの不透明さが
キャッシュフロー計算書が求められるようになった
一要因でもあります。

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Photo by Free Photos

◇固定資産

・有形固定資産…建物や備品など、実態のある設備類のことです。

・無形固定資産…借地権や特許権のことです。
 
・投資等…………子会社への投資等がこれにあたります。
           敷金保証金もここに含まれます。

 ※資産は原則として買った値段で評価する決まりがあります。
                             (取得原価主義)

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Photo by (C)PictureBox

◇繰延資産

繰延資産とは支出した費用のうち、その支出の効果が
支出の日以後1年以上に及ぶものをいいます。

今後利益を生む可能性があるものを資産としておこうという事です。

会社設立にかかった創立費、営業開始までにかかった開業費、
新株発行費、社債発行費、社債発行差金、建設利息などです。

 ※社債発行差金とは、社債の券面額と発行額との差額です。
 ※建設利息とは、特定の業種で認められる
  創業初期の赤字段階での配当です。

 ※従来、繰延資産とされていた試験研究費と開発費は、
  2003年3月期から、支出が発生した決算期に
  一括処理することになりました。

本来債権者保護の観点からいうと、財産性のない、つまり
換金不能の資産は、商法において、
貸借対照表へ計上することは認められていないのですが、
会計ビッグバンなどの影響により、今日の会計思考が
動態的思考へと変化していることもあり、
商法においても、繰延資産の計上を条件付きで容認しているのです。

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貸借対照表、資本の部

貸借対照表(バランスシート、B/S)右側、
資本の部では、資本の調達源泉が記されています。

流動負債と固定負債の区分も、
資産と同じように正常営業循環基準
ワンイヤールール(1年基準)が用いられます。

〇負債

◇流動負債

一年以内に返済しなければいけない負債のことです。

・支払手形……支払いのために自社で振り出した手形

買掛金………掛買い(信用取引)をした代金の未払い分です。

・短期借入金…返済期限が1年以内の銀行や取引先からの借入金です。  
       
・預り金………源泉徴収した税金など一時的に預かった金銭です。

・前受金………売上代金の前受け分です。

・仮受金………受け取った金銭のうち、
その内容や金額が未確定なものです。

・未払費用……未払い家賃など当期の費用だけれど請求前のものです。

・賞与引当金…従業員賞与の支払に備えた引当金です。
(平成15年4月1日以降は廃止になりました。)

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◇固定負債

・長期借入金………返済期限が1年を越える借入金や
発行して間もない社債のことです。

・退職給与引当金…従業員の退職金支払に備えた引当金です。

   また負債には債務と引当金という分類もあります。

   債務は支払い手形や買掛金、借入金や社債などで、
   引当金は退職金に備えるための退職給与引当金、
   返品に対応するための返品調整引当金などがあります。


○資本

なお資本については、債権者を保護するために、
儲けから出た利益を株主に還元(配当)することに
一定の制限を設けています。

  この規制に基づいて資本の部は分類されています。

◇資本金

株主からの出資金でいわゆる自己資本、別名株主資本のことです。
株主に配当することは禁じられています。

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◇法定準備金

法律によって、積み立てることが義務づけられている準備金です。

当期純利益から株主総会の決議に基づいて役員への賞与
株主への配当が支払われますが、そういった社外流出の度に
その1/10以上、(中間配当金では1/10)を、
資本準備金と利益準備金の合計額が
資本金の1/4になるまで積み立てなければいけない
ものです。

これまで使途が限られていましたが、平成14年の商法改正で
法定準備金が資本の1/4を超える時は、株主総会の決議により、
資本準備金は資本剰余金に、
利益準備金は利益剰余金にすることができるようになりました。

 剰余金になることで、
 会社はこれを自由に使えるようになりました。

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・資本準備金…株主からの出資金のうち、
資本金とされなかったものです。

  *払込剰余金…増資をした時に資本金に繰入れなかった分です。

  *減資差益……減資をした時に発生します。

  *合弁差益……合弁をした時に発生します。

会社は資本金が大きくなるとそれだけ
運営方法も複雑になり税金コストも高くつきます。
そのため、出資金のうち商法上資本金としなければいけない
金額以外は資本準備金として処理します。

・利益準備金…商法に従い、利益処分・中間配当を行う毎に、
社内留保として積み立てる準備金を管理します。

◇剰余金(正式名称は、その他の剰余金)

純資産額から資本金及び法定準備金を引いた残高です。
ここから配当が支払われます。

・任意積立金…配当平均積立金、災害損失積立金、製品保障積立金
価格変動積立金、減債基金積立金、事業拡張積立金、
別途積立金、などなど
       

・当期未処分利益…株主総会で利益の処分方法が
決められていない金額です。

当期純利益のうち税金を引き、
社外流出(配当や賞与)に回されなかった分

内部留保になります。

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これは企業が自身で稼ぎ出したお金ですから、
内部留保金が多いというのは、
優良会社として胸を張っていいでしょう。

事業発展のための設備投資や人的投資の資金も、
負債に頼らず、
内部留保金から拠出できるのが一番です。

ただ、健全経営の証である内部留保の厚さですが、
一時”ため込み金”と批判されたこともあったように、
事業を発展させ企業競争に備えるのか、
いざという時に備えて財務体質の強化を図るのか、
あるいは株主に配当という形で還元するのか、
内部留保金をどう使うのかは、
トップの経営手腕が問われるところです。

※利益の社内留保は、法人の経理上は次の3つを合計したものです。
  ・利益準備金
  ・任意積立金
  ・繰越損益金

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損益計算書とは

損益計算書は、英語では「Profit & Loss Statement」といい、
P/Lと略されています。

会社の1年間の事業の損益の状況を示し、
事業が儲かっているかどうかを明らかにする計算書は、
会社の成績表でもあります。

事業の損益は、その期のすべての収益から
すべての費用を差し引けば求められますが、

利益がどうのようにして生み出されたのか、
企業の最終利益が出るまでの流れを見るには、
下のように5段階に損益が計算された報告式の方が、
勘定式よりも一般的で分かりやすいでしょう。

  <1>売上総利益
  <2>営業利益
  <3>経常利益
  <4>税引前利益
  <5>当期純利益

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◇売上総利益とは、売上から売上原価を引いて求められる利益で、
一般的には粗利(あらり)ともいいます。

  ※売上総利益には経費は含まれていません。

卸・小売業では商品の仕入れ原価、
サービス業ではサービスの運営・提供にかかる
人件費や経費が原価に当り、
製造業では原材料や工場で働く人の人件費、
減価償却費などを集計したものが原価になります。

 ※この計算を原価計算といいます。

営業利益とは、売上総利益から
「販売費及び一般管理費」を差し引いたもので、
本業でいくら稼いでいるかを見る指標で、
利益の王道でもあります。

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 「販売費及び一般管理費」を略して「販管費」といい、
 これは会社運営の為にかかる経費のことです。

販売費には、広告宣伝費やノベルティ費用(販売促進費)、
販売手数料などが含まれます。

  ノベルティとは、懸賞や応募を必要としない
  ”べた付き”といって
  商品に最初から付いていて全員がもらえる
  販売促進のためのおまけ、
  サービス物品というものです。

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一般管理費は、
管理部門の経費(本社コスト)がその代表です。

経常利益とは、営業利益に受取利息などの
本業以外の稼ぎである営業外収益や、
利子支払利息などの営業外損失をあわせたもの
で、
よく経常(ケイツネ)と呼ばれています。

営業外収益と営業外損失を合わせて
営業外損益といいます。

財テクによる利益や損失もここで反映されます。

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本業の強さを見るには営業利益を、
財務力を含めた会社のトータル的な実力を知るには
経常利益
を見ればいいと言われ、
企業の実力を示す指標として一時期は
経常利益至上主義、という時代もありました。

◇税引前利益とは、経常利益に
特別収益と特別損失を加えたもの
です。

通常の事業活動とは直接関係のない臨時的に発生した
損益を計算したものです。

災害での損失や、工場用地を売却した際の利益、
リストラを行うことによって発生する一時的損失を
リストラ特損といったりもします。

当期純利益とは、税引前利益から法人税等を
差し引いたもの
です。

会社の利益には、法人税・住民税・事業税の税金がかかります。
これら税金は利益の40%にものぼり、
頭を抱える経営陣は、
棚卸資産の評価に低価法を用いるなどして
様々な節税対策を講じることになります。

当期純利益が、
その事業年度の損益状況を表す最終損益になります。

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キャッシュフロー計算書とは

お金の流れを見るため財務諸表として
2000年3月期決算から
株式公開企業に作成が義務付けられました。

期首にいくらのキャッシュがあって、
期末にいくらのキャッシュが残っているかを
示しているのがキャッシュフロー計算書です。

貸借対照表は、企業のある時点での財政状態つまり
資産状況(財産の残高)を示す財務諸表で、
資金をどこから調達して、どのように運用しているかを表しています。

損益計算書は、会社の一定期間の損益の流れから、
利益がどのようにして生み出されたのかを見る計算書
です。

そしてこの場合の「利益」とは、
帳簿上の利益であるという点に注意が必要です。

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会社の「売上」という収入は、
小切手や手形の形で支払われるのが普通で
ほとんどの場合現金では支払われません。

また掛売・掛買といった商習慣、
いわゆるツケによる信用取引を行っているのが通常です。

つまり、商品やサービスの提供は終わっていても
(売上は上がっている=利益は出ていても)
代金は未回収である場合が多く、ここに、
帳簿上は利益でも売掛金の回収能力に欠ける会社は、
資金繰りが悪化し、黒字倒産という事態も発生
するわけです。

逆に言えば、たとえ赤字であってもキャッシュさえあれば、
資金繰りが続く限り企業を存続させることができるのです。

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また設備投資については、その投資が将来にわたって
収益をもたらすことを前提に
減価償却会計がとられていますが、
長引く不況の元、その前提は必ずしも
当てはまらなくなってきています。

バブル崩壊で株式の持合解消が進み、
銀行の貸し渋りが始まったとき、
結局生き残れたのはキャッシュのある企業だったことから
キャッシュフローこそ、経営の真実の姿を映しているとして、
自ずと注目が集まってきました。

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損益計算書は「収益・費用の発生時点」で計上されますが、
キャッシュフロー計算書は「現金の回収・支払時点」で計上されます。
会社の支払能力を知るには、キャッシュフローを見ることが必要です。

経営の実態を知り、安定をはかるためには、
キャッシュフロー計算書を作成しておく必要性が出てきたのです。

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期首のキャッシュ残高に期中のキャッシュの増減を加えたものが
期末のキャッシュ残高ですが、
キャッシュ(お金)がどのようにフローし(流れ)たのか、経営活動を、

日々の事業活動から生み出された営業キャッシュフロー
事業の維持・発展のための投資に掛かる投資キャッシュフロー
借入等により資金の過不足を調整する財務キャッシュフロー

の3パートに分けることによって、
企業の本当の収益性を明らかにしようというものです。

以下一つずつ見て行きましょう。

◇営業キャッシュフローとは、企業が商品やサービスの販売で得た
現金収入から、仕入れや営業活動に必要な諸経費にかかる
現金支出を引いた、つまり本業で稼ぎ出した現金のことです。

普通ここがプラスでないとまずいです。
営業キャッシュフローが赤字に転落した場合には、
倒産へのカウントダウンが始まったとみて、
警戒しなければいけないでしょう。

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営業キャッシュフローは多いほど良く、
安定した経営を続けるには、
この数字を増加させる努力が必要です。

営業利益を上げて取引条件を改善すると、
営業キャッシュフローは増加
します。

 取引条件を改善するとは、
 売掛金に対しては信用期間を短縮して
 なるべく早く代金を回収し、

 逆に買掛金は信用期間を長く取ってもらい
 ゆっくりと支払っていけば、
 営業キャッシュフローは増加し、

 余裕をもった経営を行うことが出来ます。

また棚卸資産、つまり必要以上に在庫を抱えない
ことも大切
です。

ここで営業キャッシュフローの計算の仕方ですが、
会計上の利益にキャッシュフロー上の
調整項目を加える点がポイント
です。

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利益計算には含まれるけれど、キャッシュフロー計算には含まれない
項目として、減価償却費に代表される非資金費用があります。

設備や人的投資をした際、
金銭の支出は購入したその年だけですが、
投下した資本がその後利益を生むであろう年月で割って
毎年費用として計上するマイナス部分
(減価償却費)は、
キャッシュフロー計算の場合、
お金が出て行ったのは、購入した年だけなのですから
戻さなければなりません。

調整項目で大切なもう片方は、運転資本の増減額です。

例えば、在庫を増やしても利益計算には関係ありませんが、
現金が減っているのですから
キャッシュフロー計算ではマイナスになります。

以上のことから営業キャッシュフローの計算では、
会計上の利益に非資金費用(減価償却費)を足して、
運転資本の増加額を引くことが重要になってきます。

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◇投資キャッシュフローでは、企業の投資活動、
即ち工場建設や機械購入などの設備投資や
余剰資金を運用して企業買収や有価証券を購入し、
企業の事業活動維持・発展のために投資を行います。

ですから、この投資キャッシュフローはマイナスである方が、
将来に向けて積極的に投資をしている
と見て取れますが、
あくまで本業で稼ぎ出した現金(営業活動キャッシュフロー)
の中から投資を行うことが好ましく、
過剰な投資は後に出てくる財務活動キャッシュフローに依存した
ややもすると危険な経営体質を招いてしまいます。

また設備や有価証券を売却した場合はプラスになりますので、
ここも単にマイナスがいいというのではなく、
今何故マイナスになっているのか、プラスになっているのかの理由を
IRなどで情報を収集し、
数字の背景をきちんと把握しておくことが大切です。

 ※過去5期分のキャッシュフロー計算書を見比べるのが、
   好ましいでしょう。

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         ★フリーキャッシュフローとは★

営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを
合わせたもの
フリーキャッシュフローです。

会社が自由に使えるお金ですから、
投資を増やし事業拡大を図るなり、
借入金の返済や社債の償還で財務体質を強化するなり、
株主配当に回すなり、
その使い道には経営者の手腕が問われます。

  財務キャッシュフローに依存することなく、
  フリーキャッシュフローで経営が成り立つことが
  優良企業の証と言えるでしょう。

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◇財務キャッシュフローでは、
銀行からの借入れや社債・株式を発行して資金を調達すればプラス、
借入金を返済したり自社株を買い戻せばマイナスになります。

営業活動・投資活動キャッシュフローによって生じた
資金の過不足を調整します。
いわばフリーキャッシュフローを補完する存在でなければならず、
財務キャッシュフローがプラスに大きく傾いている企業は、
自らの力でキャッシュを生み出す能力が低く、
苦しい経営を迫られている証と見て、

投資をする際にも十分注意する必要があるでしょう。

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