株価は経済を映す鏡

株価は経済を映す鏡である、
とはよく言われることです。
そしてその株価を見る環境も、
時代と共に変化を続けている
のです。

日本は長い間、売上高を目標に突き進んできました。
これは分かりやすいです。
売り上げが上がれば会社も儲かり社員の給料もアップし、
もちろん多く売れば売るほど、市場でのシェアも獲得できます。

ところが、右肩上がりの成長を続けていた時代が終わると、
市場にはモノが溢れかえり、
賢くなった消費者は、
以前のようにモノを買わなくなりました。

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1990年代に入りバブルがはじけ、明るみになってきたのが
日本の会計制度です。

日本は経常利益を、企業経営判断の基準にしてきました。

経常利益とは、売上(粗利)から売上原価と営業経費を引き、
本業以外の損益を差し引いたもの
です。

バブル期には、多くの企業が必要以上に土地を購入し、
株式やゴルフ会員権など有価証券の売買も盛んに行っていました。

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経常利益とはそうした本業以外、主に金融商品の取扱損益も
含まれている
のです。

バブルがはじける前は、本業の経営が思わしくなくても
財テクによって粉飾することができました。
本業で出た赤字も、財務諸表上隠すどころか
利益にすることさえできました。

しかしバブルの崩壊で、本業以外の収益が入ってこなくなり
途端に本業のずさんな経営状態が露になります。

経常利益からだけでは企業の実態が分からない、
という声が高まり、これはのちに、
株式公開企業に、キャッシュフロー計算書の作成が
義務づけられる動きへと繋がっていきます。(2003年3月期決算から)

これまで株式の持合を続けていた銀行も、
ここにきて態度を一変させます。
資金繰りに困る持合会社に、土地を担保に融資を続けてきた
銀行の貸し渋りが始まったのです。

会社に出来る事といえば、資産を売却して現金化することです。
当然株式も売りに出されました。

その株を積極的に購入したのが、
外国人機関投資家と言われる人達です。

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中でもカルフォルニア州公務員退職年金基金カルパースは、
1999年9月、自らの組織に企業社会責任に関する
グローバルサリバン原則の適用を決定し、
2001年3月には Global Proxy Voting Guidelines で初めて
「企業責任の原則」という章を立て、

「株式を保有している企業が、グローバルサリバン原則や
マックブリッジ原則で盛り込まれたものを含めることを期待する」

と表明し、コーポレートガバナンスに問題がある企業に対しては、
株主議決権を行使して経営改革を迫り、
「物言う株主」としてその活動を日本でも展開するようになると、
それまで株式の持合に支えられて、
大雑把な経営をしていた日本の経営者も、
株主重視の経営に切り替えざるを得なくなり、

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ここにやっと、
株主から集めたお金(株主資本)を、
どれだけ効率よく運用し利益に結びつけることができるか、
対資本効率のいい経営を目指さなければいけない、
という姿勢が芽生えてきた
のです。

※グローバルサリバン原則とは、1999年、
レオン・H・サリバン牧師が国連で発表した、
普遍的人権に対する支持、平等な機会の促進、児童の搾取・
体罰の禁止、集会・結社の自由の尊重をはじめとする
人権・労働要素が盛り込まれた原則です。

※マックブリッジ原則とは、
カトリック協会への差別を行わない北アイルランドの事業にのみ
米国企業は投資できるとする原則です。

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この頃盛んに使われていた指標が、
ROE(株主資本利益率)ですね。

株主重視の経営=ROE重視の経営である、
と言われていた時期もありました。

が実際には、今までも見てきた通り、
一つの指標だけでは
その企業の正確な実態を把握することはできません。

様々な指標プラス貸借対照表損益計算書、
さらにはキャッシュフロー計算書など、
財務諸表と照らし合わせて
総合的に株価を読むことが重要です。

次のトピックでは、
ファンダメンタルズ分析の要、
財務諸表を見て行きましょう。

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